ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼノンのパラドックス」の意味・わかりやすい解説
ゼノンのパラドックス
paradox of Zenon
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…ゆえにこの前提は誤っている。この種の論法はこのほかにも,〈動〉にたいする論駁として,俊足のアキレウスは亀を追い越すことはできないとする〈アキレウス〉,飛ぶ矢は静止しているとする〈矢〉の論などがあるが,これらは〈ゼノンのパラドックス〉として知られている。厳密な意味での哲学的論議はパルメニデスの哲学的詩文において初めて現れたといえるが,ゼノンをもってギリシアの論証的散文の創設者とみることができよう。…
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[存在論と弁証法]
アリストテレスが,矛盾律の定義にあたって,時間的条件とまた空間を含めた広い意味での場所(トポス)の条件を付け加えたことは,反面からいえば,いわば変化と差異ないし差別相によってみたされたわれわれの住む世界においては,こうした条件をぬきにした端的な同一性や同一律は成り立たないことを考慮してのことにほかならなかったとも考えられる。事実すでにソクラテス以前の古代ギリシア哲学者たちにおいて,パルメニデスは,〈あるものはあり,ないものはない〉という同一性の論理の立場を徹底して貫き,弟子のゼノンはこれを受けて,現実世界の生成変化や多様性の一切を論理的にありえぬものとみなす有名な一連の〈ゼノンのパラドックス〉を提示し,一方,ヘラクレイトスは,一切を流れてやまぬものとみなす見解を示していた。彼らにあって,同一性や生成変化ないし差異をどう考えるかということは,たんなる思考の規則や,あるいはわれわれの住む世界内の個々の事象についての探究である以前に,なによりもこの宇宙の根源そのものにかかわる存在論的問題の次元が考えられていたのである。…
…このように,あることを立てるとちょうどその否定が結果するという形のパラドックスを二律背反という。運動に関するパラドックスの代表的なものにエレアのゼノンのパラドックスがある。これは運動が一般に不可能だとするもので,ゼノンはこれを四つの形で述べた。…
※「ゼノンのパラドックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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