ソクシンラン(英語表記)Aletris spicata (Thunb.) Franch.

改訂新版 世界大百科事典 「ソクシンラン」の意味・わかりやすい解説

ソクシンラン
Aletris spicata (Thunb.) Franch.

山麓の明るい草地や路傍に多いユリ科の多年草。花茎には縮れた白毛を密生し,粉をふいたように見える。花茎は高さ10~30cmで,根生する線形の多数の葉の間から1本出る。和名の〈束心蘭〉は葉の束の中心から花茎が出る性質にちなんだものといわれている。花は穂状花序に多数つき,花被片は長さ2~3mmで,6枚が合着して筒状となる。茎と同様に縮れ毛を密生する。根は薬用とされ,咳止めに効用があるといわれる。本州(関東以西),四国,九州,朝鮮,中国大陸,台湾に分布する。

 ソクシンラン属Aletris(英名colicroot)はアジアと北アメリカに分布し,約30種を含む。ユリ科には珍しく子房下位のため,独立の亜科(ソクシンラン亜科)に分類されることもあるが,花の構造はシュロソウ亜科のノギランMetanartheciumと一致する。ノギラン属と同一視する見解もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソクシンラン」の意味・わかりやすい解説

ソクシンラン
そくしんらん / 束心蘭
[学] Aletris spicata (Thunb.) Fr.

ユリ科(APG分類:キンコウカ科)の多年草。地下茎は短く、細い根を多数出す。葉は根際から多数出て、長さ30センチメートル、淡緑色、質はやや堅く、3本の脈がある。花茎は縮れた毛があり、直立して高さ30~70センチメートルで、線形の小さい包葉をまばらにつける。花は4~7月、穂状花序につき、筒状で長さ5~6ミリメートル、淡紅色を帯びた白色で、表面には白い縮れた毛がある。山野草原に生え、関東地方南部以西の本州から沖縄および朝鮮半島、中国大陸、台湾、フィリピンに分布する。ユリ科とされていたが、APG分類で、ノギラン属、キンコウカ属とともにキンコウカ科としてまとめられた。

河野昭一 2018年10月19日]

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