日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダムディンスレン」の意味・わかりやすい解説
ダムディンスレン
だむでぃんすれん
Цэндийн Дамдинсурэн/Tsendiyn Damdinsuren
(1908―1986)
モンゴルの小説家、詩人。ナツァクドルジとともに現代モンゴル文学の創始者。1926年ごろから文芸活動を始め、29年モンゴル新文学の指標ともいうべき中編小説『捨てられた娘』を発表、封建制度とその圧迫を鮮明に描き、牧民大衆の覚醒蜂起(かくせいほうき)と自己解放を優れた筆致で情熱的に呼びかけた。さらに長詩『わが白髪(はくはつ)の母』(1934)により、卓抜した才能と彼自身の政治思想の向上を立証した。透明な曲調の美しい詩句と叙情的色彩が作品を包み、広く愛誦(あいしょう)されている。
30年代より文字改革工作に参加し、新文字と正字法の草案作成、その教材と参考書の著述、蒙露(もうろ)辞典の編纂(へんさん)、『元朝秘史』の現代語訳などの業績とともに、文学に関する論文も多い。モンゴル人民共和国国歌『われらみな平和を希(ねが)う』は彼の作詩である。
[荒井伸一]