チリーヤシ(読み)ちりーやし(その他表記)Chilean wine palm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チリーヤシ」の意味・わかりやすい解説

チリーヤシ
ちりーやし
Chilean wine palm
syrup palm
[学] Jubaea chilensis (Molina) Baill.
Jubaea spectabilis HBK.

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)ココヤシ亜科チリーヤシ属の1種で、1属1種。属名は王名Jubaにちなみ、種名はラテン語で優越的の意味である。チリ原産。幹は直立し、円柱塔状で、高さ12~20メートル、径1.5メートル。幹肌にカナリーヤシに似た波紋の葉痕(ようこん)がある。葉は緑色披針(ひしん)形、全裂羽状葉で長さ3~4メートル。羽片は長さ30~45センチメートル、幅2.5センチメートル。葉軸はやや扁平(へんぺい)で背面は凸形。葉鞘(ようしょう)は短く、基部から割れて開き、縁辺に強靭(きょうじん)な毛状繊維がある。外観はカナリーヤシに似ているが、小葉羽片の横断面がV字状になっており、また葉柄に刺(とげ)がなく、幹の径と葉冠の径の比、幹の規模などチリーヤシ属のほうが著しく大きいことから区別できる。

 雌雄同株で単性花をつける。葉間から肉穂花序を伸ばし、仏炎包が開き、太い花柄が多数の花軸を垂れ下げる。ココヤシと同様、花序の基部は1個の雌花と2個の雄花が1組になって着生し、花軸の先端にかけて雄花が密生する。花は乳白色で雄しべは15~30本、柱頭が3裂する小さく不稔(ふねん)の雌しべがある。果実は黄色の球状卵形、径3.8センチメートルの核果で、繊維質の中果皮肉を食用とする。種子淡褐色で正球形、径2.5センチメートル。種子の低周部に3個の珠孔または孔痕がありその1個に胚(はい)がある。花柄の切り口から出る樹液を煮つめて糖蜜(とうみつ)にする。原産地ではこれをミール・ド・パルマmiel de palma(ヤシの粉の意)と称し、市販されている。1本のチリーヤシからは350リットルの樹液がとれる。自生群落はチリ国内に2か所ある。3℃以上で生育するが鉢栽培には適さない。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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