テレオノミー(その他表記)teleonomy

翻訳|teleonomy

改訂新版 世界大百科事典 「テレオノミー」の意味・わかりやすい解説

テレオノミー
teleonomy

アリストテレス以来用いられてきた目的論teleologyという形而上的なことばに代わるものとしてピッテンドライC.S.Pittendrighによって提案されたことば(1958)。形態,生理過程,行動,生活史,発生過程など,生物の示すさまざまな現象はそれぞれに特定役割をもち,その役割を果たすように形成されている。このような現象に対して,物理科学の機械論的な説明は,どのようなメカニズムによってそうなっているかに答えるだけであって,なぜそうなっているかには答えてくれない。そのような問いに対しては,古代ギリシア以来目的的説明(目的論)で答えることがなされてきたが,とくに17~18世紀には,それが神学的説明と結びついて,生物の理解に大きな混乱を引き起こしてきた。だが,19世紀に進化論が成立し受け入れられてから,そのような現象は進化史的に形づくられてきたものである,という説明が可能であることが気付かれるようになり,20世紀に入って遺伝学が発展すると,一見目的指向的な生物現象や進化過程を,遺伝的プログラムの発現と獲得過程として説明できることが理解されてきた。そこでは,鳥の翼は空を飛ぶためにあり,空を飛ぶために進化してきたというような説明が,形而上的な目的論とはまったく異なった内容で可能である。目は見るためにあり,呼吸はエネルギー獲得のためにあり,発生は成体になるためにあるというような説明方法または理解の仕方は,非生物に対しては成り立たないが,生物に対してはまったく正当なものとして成り立つ。このような説明方法に対して,古い目的論ということばを適用することは誤解を招くことが多いので,それに対して新しく提案されたことばがテレオノミーである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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