トロス山脈(その他表記)Toros

改訂新版 世界大百科事典 「トロス山脈」の意味・わかりやすい解説

トロス[山脈]
Toros

トルコアナトリア南部,アンタリヤからアダナにかけて地中海岸とほぼ並行して東西に走る褶曲山脈。古くはギリシア語でタウロスTauros山脈,ラテン語でタウルスTaurus山脈と呼ばれた。全長約900kmで,アナトリアを年間降水量1000mm以上の地中海岸と500mm以下のアナトリア高原とに大きく二つに分ける。海岸から急にそびえ,アダナ近郊のセイハンSeyhan川のデルタ地帯(キリキアまたはチュクロバと呼ばれる)を除いて平野は少ない。アイドスAydos山(3480m),デミルカズクDemirkazık山(3756m)など3000mを超える高峰がそびえる。東端にキリキア門があり,海岸とアナトリア高原を結ぶ重要な通商路として古来より利用されてきた。セイハン川以東は東南トロス山脈と呼ばれ,アルメニア台地,イランザーグロス山脈に連なる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロス山脈」の意味・わかりやすい解説

トロス山脈
トロスさんみゃく
Toros Daǧları

英語ではタウルス Taurus。 (1) トルコ南部を地中海岸に並行して走る大山脈。トルコ西部のエウリディル湖のあたりから東へ走り,中央部で大きく北東に湾曲してジェイハン川中流域にいたる,約 450kmの山脈。さらに北東に延びるアンティトロス山脈も含めると全長 800kmに及ぶ。最高峰はアラダウ山 (3724m) であるが,支脈中のエルジス山 (3916m) はこれより高い。標高 3000~3600m級の山々が並び,標高 2400m以上にはマツシーダー,オーク,ネズのまばらな森林がある。ユーラシア褶曲帯の一部をなし,白石灰岩が主体となっている。銀,銅,亜炭亜鉛,鉄,ヒ素などの鉱床があり,一部は採掘されている。夏季は高温乾燥,冬は多雪寒冷である。 (2) アンティトロス山脈。トロス山脈がジェイハン平野以北より北東に延びて,ユーフラテス川上流のトゥンジェリ,ビンギョルの山地に続く山脈。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロス山脈」の意味・わかりやすい解説

トロス山脈
とろすさんみゃく
Toros Dalari

トルコの小アジア半島南部を地中海沿いに東西走する山脈。トーラス(タウルス)Taurus山脈ともいう。アルプス造山帯に属する3000メートル級の大褶曲(しゅうきょく)山脈で、最高峰はアダナ北方にあるカルドゥダー山(3734メートル)。トルコの内陸部と地中海沿岸部を隔てる障壁であるが、史上著名な東部のキリキア門のほか数か所に横断交通路が開かれる。高山部は針葉樹林で覆われ、家畜放牧に利用される。東の延長は内陸部をアンティ・トーラス山脈として東走し、さらにクルディスターン山脈やイランのザーグロス山脈へとつながる。

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