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ドラギ どらぎMario Draghi

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ドラギ
どらぎ
Mario Draghi
(1947― )

イタリアの経済学者。第3代ヨーロッパ中央銀行ECB)総裁。9月3日イタリアローマ生まれ。ローマ・ラ・サピエンツァ大学卒業。マサチューセッツ工科大学で経済学博士号(Ph.D.)取得。イタリア財務省長官(1991~2001)、ゴールドマン・サックス副会長(2002~2006)、イタリア中央銀行総裁(2006~2011)を歴任し、2011年11月にECB総裁に就任。[白井さゆり]

ユーロ崩壊の危機を防いだ立役者の評価

ギリシアを発端にしたユーロ債務危機が深刻化し、ユーロの崩壊懸念が高まるなかで、2012年7月に「ユーロを守るためになんでもする用意がある」と発言し、その直後の8月に金融緩和プログラムOutright Monetary Transactions(OMT)を発表、翌9月にOMTを開始し、ユーロ圏の金融市場の安定化を導いたことで高く評価される。OMTは、ユーロ圏加盟国がヨーロッパ連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の経済プログラムあるいは予備的プログラムを実施するという条件つきで、残存期間1~3年の国債を買い入れるという内容である。事前に買入れ規模を設定していないことが市場に好意的に受け止められ、実際にOMTが利用されることはなかったが、ヨーロッパ債務危機がスペインやイタリアなどに連鎖して波及するのを防いだ。また、2011年12月と2012年2月の2回、3年物の長期資金供給オペレーションLonger-Term Refinancing Operations(LTRO)も実施し、ユーロ圏の周縁国の銀行の資金調達費用の低下に寄与した。[白井さゆり]

本格的な非伝統的金融政策の開始

その後、低インフレの長期化、予想インフレ率の低下、銀行の資産縮小、ユーロ高などを懸念して、2014年6月以降、包括的な金融緩和に着手している。
 ECBの預金ファシリティ金利にマイナス金利を適用しており、2014年6月にマイナス0.1%とし、その後、段階的に引き下げて2016年3月にマイナス0.4%としている。
 資産買入れは、当初は資産担保証券(ABS)やカバードボンドなどに限定していたが、2015年1月に大規模資産買入れ方針を発表し、同年3月から開始するに至っている。買入れ資産は段階的に拡大しており、2016年11月時点では、2017年3月まで国債、政府機関債、国際機関債、地方債、社債などを合わせて毎月800億ユーロの買入れを実施すると公約している。
 このほか、2014年9月に民間貸出の実績をもとに長期資金を低利で貸し出す制度(Targeted Longer-Term Refinancing Operations:TLTRO)を導入し、2016年6月まで四半期ごとに実施した。銀行による民間への貸出実績をもとに、ECBはその3倍までの金額を低い貸出金利(2016年3月からは0%)で貸し出している。2016年3月にはTLTROを導入。借入れ期間は4年の固定とし、一定以上の民間貸出を増やす銀行ほど低利の貸出金利(最低金利は、預金ファシリティ金利で、2016年8月時点で、マイナス0.4%)で資金供給を受けられる。
 ECB内では、ドイツやオランダなどユーロ圏主要国によって、資産買入れやマイナス金利政策などの金融緩和効果を疑問視する批判的な見方があり、ECB理事会でこうした政策を決定する場合も、理事会メンバーが全員一致でない場合もしばしばみられる。しかし、ドラギは強力なリーダーシップを発揮し、大胆な金融緩和手段をECB理事会のメンバーの大多数の支持を得ながら相次いで打ち出してきており、その姿勢と交渉手腕には高い評価がある。[白井さゆり]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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