日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴールドマン」の意味・わかりやすい解説
ゴールドマン(Emma Goldman)
ごーるどまん
Emma Goldman
(1869―1940)
20世紀初頭、アメリカで活躍した無政府主義者。ロシアのコブノでユダヤ人の子として生まれる。1885年12月姉とともにアメリカに渡り女工となったが、社会の不正に憤りを感じて政治活動に身を投じ、無政府主義者となった。マッキンリー大統領の暗殺者が彼女の著書を持っていたため、警察から教唆の嫌疑をかけられ、一躍悪名をとどろかせた。大規模な反戦活動によりバークマンらとともに1919年に国外追放されるまで、労働者や女性のために労働運動や産児制限運動などさまざまな運動を組織、展開した。また、雑誌『母なる大地』Mother Earth(1906~17)を発行して、つねに国家権力に対抗し、個人の権利、自由のために闘った。革命なったロシアへ追放されたが、ロシアの情況に絶望して22年そこを脱出、以後イギリスやフランスに滞在して主として執筆活動に従事、『自伝』や『ロシア革命に対する幻滅』などを書いた。40年5月14日、スペイン内戦で戦う同志たちへの資金調達のため渡航したカナダのトロントで病死。そのなきがらは、希望によりシカゴ郊外のワルドハイム墓地に葬られた。
[太田和子]
『エマ・ゴールドマン著、はしもとよしはる訳『アナキズムと女性解放』(1978・JCA)』▽『太田和子「エマ・ゴールドマン――身体で刻んだ解放史」(『フェミニスト』7号所収・1978・フェミニスト)』