翻訳|nitrosamine
一般式RR'NNOで表される化合物の総称。ニトロサミンともいう。第二アミンに亜硝酸を作用させると得られる淡黄色油状の液体または固体で、水に不溶、有機溶媒に可溶。
ジメチルニトロソアミン(CH3)2NNO、ジイソプロピルニトロソアミン[(CH3)CH]2NNOなどがその例で、変異源性は弱いが、発癌(はつがん)性が強い物質である。食品中に含まれる第二アミンと食品発色剤の亜硝酸ナトリウムが体内で反応して発癌性のニトロソアミンを生成する危険性が指摘されているが、その危険度ははっきりとはしていない。
1分子中にニトロソ基-NOとアミノ基-NH2をもつ化合物もニトロソアミン類と総称される。たとえば、N,N-ジメチルアニリンをニトロソ化したp(パラ)-ニトロソジメチルアニリンなどはこれにあたる。
[加治有恒・廣田 穰 2015年3月19日]
上記の一般式で表される化合物(N-ニトロソアミン)をさす。通常,第二アミンに由来するニトロソアミンのみが安定に存在する。第二アミンを酸性条件下に亜硝酸と反応させると得られる。
また,塩化ニトロシル,四酸化二窒素,NO⁺BF4⁻のようなニトロシル化合物を用いても合成できる。脂肪族ニトロソアミンは黄色の液体か低融点の固体で水に溶ける。芳香族ニトロソアミンは水に溶けない。N-ニトロソアミンは環境性発癌因子として近年注目を集めており,薫製食品,ビールなどから検出されたとの報告もある。ニトロソアミンが酵素的にα-ヒドロキシル体となり,その分解により生じたジアゾヒドロキシドが核酸をアルキル化することが,発癌の原因と考えられている。還元によりヒドラジンに,酸性条件下の加水分解でもとのアミンになる。アルカリによる分解でジアゾアルカンを生成するので,その合成原料として重要である。
執筆者:岡崎 廉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
第二級アミンのN-ニトロソ置換体の総称.図の式で表される.第二級アミンに亜硝酸を作用させると得られる.水に溶けにくい黄色の油状液体または固体.リーベルマン反応により青または紫色を呈する.亜鉛末還元を行うとヒドラジンが得られる.以下に具体例を示す.【Ⅰ】N-ニトロソジメチルアミン:C2H6N2O(74.0).(CH3)2NNO.黄色の液体.沸点153 ℃.1.005.水と99.3 ℃ で共沸する.LD50 58 mg/kg(ラット,経口).[CAS 62-75-9]【Ⅱ】N-ニトロソジエチルアミン:C4H10N2O(102.1).(C2H5)2NNO.沸点177 ℃ の黄色の液体.水に可溶.LD50 280 mg/kg(ラット,経口).[CAS 55-18-5]いずれもヒトに対する発がん性および奇形生成性物質とみられており,実験的にも肝臓毒性が報告されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…癌を完全に定義づけることは難しいが,ひとまず次のようにいうことができる。すなわち,〈癌とは,多細胞生物の体の中に生じた異常な細胞が,生体の調和を無視して無制限に増殖し,他方,近隣の組織に浸潤したり他臓器に転移し,臓器不全やさまざまな病的状態をひき起こし,多くの場合生体が死に至る病気〉である。 癌は多細胞生物の病気であって,細菌やアメーバなど単細胞生物には癌はない。多細胞生物では,1個の生殖細胞が分裂増殖し,さまざまな器官に分化し,全体として調和のとれた個体として活動している。…
※「ニトロソアミン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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