希薄な溶液状態でのみ知られる一塩基酸。化学式HNO2。亜硝酸バリウムに硫酸を加え,沈殿する硫酸バリウムを濾別すると得られる。
Ba(NO2)2+H2SO4─→2HNO2+BaSO4↓(固体)
また,硝酸に一酸化窒素を作用させても得られる。弱酸で,解離定数K=6×10⁻6(25℃)。亜硝酸水溶液は不安定で,加熱すると次のように急激に分解する。酸化,還元の両作用を有し,たとえば酸性水溶液中でヨウ化物イオンI⁻と反応してヨウ素I2を遊離し(酸化作用),過マンガン酸塩には逆に酸化されて硝酸イオンNO3⁻となる。これらの反応は亜硝酸イオンNO2⁻の分析に使われている。多くの金属の亜硝酸塩が知られており,それぞれ硝酸塩と炭素,鉄,鉛などの還元性物質の混合物を熱するか(アルカリ金属塩NaNO2,KNO2などの場合),金属水酸化物あるいは酸化物に一酸化窒素と二酸化窒素の混合気体を作用させる,または亜硝酸カリウムと金属塩との複分解などの方法でつくられる。
亜硝酸イオンは窒素を中心とした折れ線型構造である。遷移金属イオンに配位して錯体を形成する場合,中心の窒素で配位結合をつくるものをニトロ錯体,酸素で配位するものをニトリト錯体と呼ぶ。前者の例にはニトロペンタアンミンコバルト(Ⅲ)塩化物[Co(NO2)(NH3)5]Cl2,後者の例にはニトリトペンタアンミンコバルト(Ⅲ)塩化物[Co(ONO)(NH3)5]Cl2などがある。
芳香族第一アミンから芳香族ジアゾニウム塩をつくる反応に亜硝酸が使われている。
この反応はジアゾ化と呼ばれ,反応性の高いジアゾニウム塩から多くの誘導体を合成することができるため,有機化学では非常に重要な反応である。
執筆者:漆山 秋雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
HNO2(47.01).純粋な液体または固体は得られていない.気体は,
2HNO2 H2O + NO + NO2
の平衡状態にある.希薄な水溶液は比較的安定である.亜硝酸銀と塩酸,または亜硝酸バリウムと硫酸との反応によってつくられる.HNO2気体分子は,H-O-N-O型構造.∠H-O-N,∠O-N-Oは,各102°と111°で,シス,トランス両形があるが,トランス形のほうがより安定である.水溶液は弱酸性(pKa 3.3(291 K))で徐々に分解する.
3HNO2 → HNO3 + H2O + 2NO
アルカリ金属,アルカリ土類金属およびアンモニウムの塩は得られるが,アルミニウムの塩は得られない.アルコールと安定なエステルをつくる.ある種のアルキルエステルは血管拡張剤として医薬品に用いられる.[CAS 7782-77-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
窒素のオキソ酸の一つ。水溶液および蒸気としてだけ存在する。化学式HNO2 式量47.02。気体分子はHONOの折れ線型構造。水溶液は弱い一塩基酸で、亜硝酸バリウムと希硫酸、亜硝酸銀と塩酸などを低温水溶液中で反応させ、沈殿を濾別(ろべつ)して水溶液として、または一酸化窒素と二酸化窒素の等容混合物を氷水に溶かして得られる。温めると一酸化窒素と硝酸を生ずる(可逆反応)。酸化剤としても還元剤としても働く。強い酸化剤によって硝酸に酸化され、ヨウ化物によって一酸化窒素に、二酸化硫黄(いおう)によってヒドロキシルアミンに、また亜鉛によってアンモニアに還元される。亜硝酸は有機アミンと反応させてジアゾニウム塩の合成に用いられる。
[守永健一・中原勝儼]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新