ニュー・エイジ(読み)にゅーえいじ(その他表記)New Age

翻訳|New Age

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニュー・エイジ」の意味・わかりやすい解説

ニュー・エイジ
にゅーえいじ
New Age

個人の意識変容による人間社会の究極的な文化的発展という信念基盤を置くイデオロギー運動。神智学やロシア神秘主義にルーツをもつこの思想は、1960年代アメリカの対抗文化(カウンターカルチャー)の土壌のなかで東洋文化への大衆的関心が高まったことを背景に、1970年代に開花する。ニュー・エイジ思想家たちは近代科学技術と(とくにネイティブ・アメリカンや東洋の)民俗的精神文化との統合を主張し、ニュー・サイエンス運動などを展開するが、音楽もまた、その思想運動の重要な手段として考えられさまざまな試みがなされた。

 最初のニュー・エイジ・ミュージックは、クラリネット奏者のトニー・スコットTony Scott(1921―2007)による『禅の瞑想(めいそう)のための音楽』Music for Zen Meditation(1964)であるといえよう。アジアと西洋の音楽要素を結合させたこの音楽に続き、ジャズやプログレッシブ・ロック、フュージョンや電子音楽の音楽家たちが「東洋的」音楽や、さまざまな民族音楽に目を向け始める。

 しかし最終的にニュー・エイジ・ミュージックのイメージを決定したのは、1976年にギタリストのウィリアム・アッカーマンWilliam Ackerman(1949― )により設立されたレーベル、ウィンダム・ヒル・レコードであった。ウィンダム・ヒルは、自然と人間の調和モットーに、ジャズやクラシック、民族音楽を柔らかいトーンで折衷した音楽を、アコースティックなインストゥルメンタル・アレンジで演奏した作品を多数リリースし、1980年代、都市環境の喧騒(けんそう)に疲れた人々に支持された。ピアニストのジョージ・ウィンストンGeorge Winston(1949―2023)ら人気ミュージシャンを輩出したウィンダム・ヒルは、ニュー・エイジ・ミュージックを音楽産業に莫大(ばくだい)な利益をもたらすジャンルにしたのである。

 1986年からはアメリカ最高の権威をもつレコード賞であるグラミー賞にもニュー・エイジ・ミュージック部門が設けられ、ニュー・エイジ・ミュージックはポピュラー音楽の重要な一ジャンルとして定着している。

増田 聡]

『ピーター・バスティアン著、沢西康史訳『音楽の霊性――ニューエイジ・ミュージックの彼方に』(1994・工作舎)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「ニュー・エイジ」の解説

ニューエイジ

宇宙や生命という大きな存在と自己とのつながりや、人間のもつ無限の潜在能力を強調し、個人の霊性・精神性を向上させることを目指す思想・実践で、一種サブカルチャーとして広く社会に存在する。米国ではニューエイジ、日本では精神世界と呼ばれることが多い。ニューエイジや精神世界の具体的なかたちは一様ではなく、瞑想、チャネリング、占星術、気功、自然食、セラピーなど様々な形態をとる。またその活動は、本・雑誌、インターネット、イベント、ワークショップなどによる、緩やかなネットワークによって支えられていることが多い。島薗進(東京大学教授)は、ニューエイジや精神世界の動向をグローバルな視点から新霊性運動と呼んでいる。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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