フュージョン(読み)ふゅーじょん(その他表記)fusion

翻訳|fusion

デジタル大辞泉 「フュージョン」の意味・読み・例文・類語

フュージョン(fusion)

融合。溶解。統合。
ジャズロックラテン音楽など、ジャンルの異なる音楽を融合した音楽。クロスオーバー

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精選版 日本国語大辞典 「フュージョン」の意味・読み・例文・類語

フュージョン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] fusion )
  2. 融合すること。
  3. ポピュラー音楽で、ジャズ、ロック、ラテン、ソウルなどの要素を融合したサウンドのこと。
    1. [初出の実例]「彼は、フュージョン系のバンドで、キーボードを担当するリーダーだった」(出典:なんとなく、クリスタル(1981)〈田中康夫〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フュージョン」の意味・わかりやすい解説

フュージョン
ふゅーじょん
fusion

融合の意。1970年代初期に出現した、ジャズ・プレイヤーがロックのサウンドや奏法を取り入れ融合させた音楽ジャンル。日本ではクロスオーバーとほぼ同義だが、英米では後者は「あるジャンルの音楽(とくに黒人音楽カントリー、ジャズなどの相対的にマイナーなジャンル)が他ジャンル(とくにロック、ポップスなどの主流ジャンル)のヒットチャートに進出すること」をも意味し、必ずしもジャズとロック間でのジャンル越境だけに限定されない。

 フュージョンの歴史的起源は1960年代後半のモダン・ジャズ、とりわけトランペット奏者のマイルス・デービスの活動に見いだされる。デービスは60年代のロックの流行に刺激され、電気楽器を用いたジャズを演奏し始める。ウェイン・ショーターサックス)、ハービー・ハンコックキーボード)、ジョー・ザビヌル(キーボード)、チック・コリア(キーボード)らを起用した『ビッチェズ・ブリュー』(1970)はジャズに電気楽器を大幅に導入して成功した最初の例となり、このレコードに参加したミュージシャンたちは伝統的なジャズの様式を離れ、よりロックやファンク、ソウルなどを取り入れた音楽を演奏するようになる。ショーターザビヌルは70年にウェザー・リポートを結成し、ロックやラテンのリズムのうえでジャズの即興演奏を行った(『ヘビー・ウェザー』(1976)など)。ハンコックやコリアもロックを取り入れたジャズを演奏するようになり、それらの新しいジャズは評論家によってジャズ・ロック・フュージョン、後にフュージョンという新しい名前でよばれるようになる。

 フュージョンはしだいにロック出身のプレイヤーが参入するようになり、ジャズの伝統を革新し、発展させるモダニズム運動のための実験という初期の理念もしだいに薄れ、ジャズのハーモニーによって心地よくアレンジされた楽曲を、ロックの楽器編成によって演奏する様式として定着した。そのためしばしばジャズ評論家からは商業主義として排斥され、ロック批評家からはテクニック至上主義として軽んじられるが、1980年代以降の主流のロックやポップスで行われる演奏技法を高度に洗練し、スタジオ・ミュージシャンの技術的な基盤を養成するうえでフュージョンが果たしてきた役割は大きい。

[増田 聡]

『中山康樹・ピーター・バラカン・市川正二著『ジャズ・ロックのおかげです』(1994・径書房)』

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百科事典マイペディア 「フュージョン」の意味・わかりやすい解説

フュージョン

1960年代後半に生まれ,1970年代に流行したジャズの一様式。〈融合〉の意。ジャズがロックやポップス,クラシック,ラテンなどのジャズ以外のカテゴリーの音楽と融合し,より大衆化したもの。1969年にマイルス・デービスが自らの復活を賭して発表したアルバム《ビッチェズ・ブリューBitches Brew》を原点とし,1970年代にウェザー・リポートやチック・コリアらに受け継がれた。
→関連項目エバンスジャレットハンコック

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フュージョン」の意味・わかりやすい解説

フュージョン
fusion

1970年代に登場した,ジャズとロック,ラテン,ソウルなど他のジャンルの音楽要素とを自由に融合したジャズの様式。初期にはクロスオーバー crossoverとも呼ばれた。 M.デービスが電子楽器を使って新しい音色を追求したのをはじめとして,ロックやラテンのリズムを取入れたり,和声にオスティナートを用いるなど,聴きやすく洗練された音で人気を得て,ジャンルをこえた音楽のさきがけとなった。代表的なバンドに C.コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー」などがある。

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音楽用語ダス 「フュージョン」の解説

フュージョン[fusion]

'60年代のジャズ・ロックをさらに押し進めたジャズの1ジャンル。'70年代に大流行した。ジャズ、ロック、ラテン、ソウルなど、さまざまな音楽のエッセンスを吸収し発達した。ラリー・カールトン、リー・リトナー、ブラザーズ・ジョンソン、スタッフなどが代表的なアーティスト。

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デジタル大辞泉プラス 「フュージョン」の解説

フュージョン〔オートバイ〕

ホンダ(本田技研工業)が1986年から製造・販売したスクータータイプのオートバイ。総排気量244cc(普通自動二輪車)。エンジン形式は水冷4ストローク単気筒SOHC。発売当初、スクーターでは最長のホイールベースを誇った。

フュージョン〔筆記具〕

イタリア、オマス社の万年筆の商品名。2010年、同社創設85周年を記念して発売。

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世界大百科事典(旧版)内のフュージョンの言及

【ジャズ】より


[ジャズのゆくえ]
 1969年マイルス・デービスは《ビッチェズ・ブリューBitches Brew》(CBS)というレコードを発表した。13人のメンバー中,11人までがリズム・セクションという楽器編成から流れ出すこみいった複合リズム,さらにロックなどジャズから派生して発展したポップスからの再影響に加え,電気楽器を駆使したサウンドは,70年代の新しい動き――クロスオーバーcrossoverないしフュージョンfusionの先駆的作品と評価されている。70年代のフュージョン界の主要なリーダーは,そのほとんどがマイルス・バンドの出身者であったことは,マイルスの存在と影響力がなお衰えていないことを示すものであった。…

【ポピュラー音楽】より

…この傾向は今後も続くものと思われ,インドネシアなどアジアからも新しいポピュラー音楽が起こりつつある。他方,アメリカ国内の黒人音楽は,1960年代のソウル・ミュージック,70年代のフュージョン(商業化したジャズ)とディスコ・ミュージック(商業化したロックとソウル),80年代のマイケル・ジャクソンなど黒人による新種の商業主義音楽など,高度音楽産業による大量消費商品と化してしまった。 このようにポピュラー音楽は,基本的に資本主義経済のもとでの商品としての側面と,下層大衆の意識の表現様式としての側面との二重の性格を有し,資本主義の矛盾の増大とともにこの二つの面の間の矛盾も大きくなり,今後の動きは予測できないほど混沌としているのが現状だといえる。…

※「フュージョン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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