日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマキガ」の意味・わかりやすい解説
ハマキガ
はまきが / 葉巻蛾
bell moth
昆虫綱鱗翅(りんし)目ハマキガ科Tortricidaeに属するガの総称であるが、幼虫が葉を巻く習性のあるガ全般をさすこともあり、この場合は英名をleafroller mothという。ハマキガ科の成虫は一般に小形で、はねが細長く、前翅の翅頂がとがり、はねを屋根形にして静止している姿が西洋の釣鐘に似ていることからbell mothとよばれている。前翅は黄褐色、茶褐色あるいは黒褐色で、網目状の模様と、濃色の斜帯をもつ種が多い。雄の前翅の基部近くの翅膜が裏面のほうに折れ重なっている種が少なくない。大部分は夜行性で、よく灯火に飛来するが、夕方に活発に飛ぶものが多く、ごく一部の種、たとえば大形で美麗なビロードハマキのように昼飛性の種も少数含まれている。ほとんど全世界に分布し、約4500種が知られ、日本産として学名を有するものは約560種。温帯から亜熱帯に多くの種を産するが、寒冷地に適応しているものもあり、ごく一部の種は高山帯にだけ生息している。たとえば、タカネハマキ、タカネベニハマキ(以上は本州中部地方)、ダイセツチビハマキ(北海道大雪山)。幼虫は円筒形で白色、緑色、黒色などさまざまな色をしているが、ごく一部を除き、斑紋(はんもん)がない。体毛の短いイモムシで、ハマキムシともよばれる。大部分は樹木や低木の葉を巻いてその中にすみ、葉を食べるが、針葉樹の葉を綴(つづ)り合わせて食べるもの、新梢(しんしょう)、果実、種子内に潜入するもの、茎や根内に孔(あな)をあけて食べるものなどさまざまである。
害虫としてよく知られているものをあげると次のとおりである。リンゴ、ナシなど果樹の葉を食べるもの(カクモンハマキ、リンゴノコカクモンハマキ)、針葉樹に加害するもの(マツアトキハマキ、カラマツイトヒキハマキ)、チャの害虫(チャノコカクモンハマキ)、クリの実に潜って加害するもの(クリミガ)、リンゴ、ナシなどの果実に潜るもの(リンゴヒメシンクイ、ナシヒメシンクイ)、アズキ、ダイズなどを加害するもの(マメサヤヒメハマキ、マメノヒメシンクイ)。
[井上 寛]