ハマビワ(読み)はまびわ

改訂新版 世界大百科事典 「ハマビワ」の意味・わかりやすい解説

ハマビワ (浜枇杷)
Litsea japonica (Thunb.) Juss.

沿海地に生育するクスノキ科の常緑小高木で,高さ7mほどになる。葉は互生し,葉身は厚い革質で長さ7~15cm,幅3~5cmの長楕円形,全縁。葉の表は暗緑色で光沢があり,裏には黄褐色の軟毛が密生する。葉柄は2~3.5cm。雌雄異株で,花は淡黄緑色の小花,10月ころ5~6花ずつが,基部を3~5枚の総苞片に包まれて,葉腋ようえき)から生ずる。花被は先が6裂する。雄花おしべは9~12本で3~4輪に並び,花被から超出する。液果は長さ15~18mmの楕円球形で,翌年の秋,緑色~暗灰紫色に熟する。山口県,島根県,四国南西部,九州,琉球,朝鮮南部に分布し,海岸の砂防,防風,防潮用に植えられることもある。葉がややビワに似て,海岸に生えるのでハマビワという。

 同属のバリバリノキ(一名アオカゴノキ)L.acuminataBl.) Kurataはハマビワに似るが,葉がより細く,裏面が少し粉白を帯びる。和名は風にそよぐ葉がたてる音に基づく。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマビワ」の意味・わかりやすい解説

ハマビワ
はまびわ / 浜枇杷
[学] Litsea japonica (Thunb.) Juss.

クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の常緑高木で、高さ7メートルに達する。幹は褐色、枝は褐色の毛が密生する。葉は厚く、狭楕円(きょうだえん)形、長さ7~15センチメートルで、全縁。花は10~11月、葉腋(ようえき)から出た散形花序につき、淡黄色の花を開く。雌雄異株。漿果(しょうか)は球形で長さ1.5~1.8センチメートル。翌年の春に黒緑色に熟す。本州(山口県、島根県)、四国、九州、沖縄および朝鮮半島に分布し、海岸の近くに生える。

 名は、沿海地に生え、葉の形や枝や葉に毛の多いことがビワ(バラ科)に似ることによる。ハマビワ属は約200種があり、アジア、南北アメリカ、オセアニアに分布する。

[門田裕一 2018年8月21日]

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世界大百科事典(旧版)内のハマビワの言及

【ヒバリ(雲雀)】より

…15属75種あまりに分類されるうち,アフリカにはその全属と約80%の種が分布している。アフリカから南アジアに広く分布するヤブヒバリMirafra javanica1種だけがオーストラリアまで分布を広げ,新世界のアメリカにはハマヒバリEremophila alpestrisただ1種が分布を広げ,そこで多様な環境に進出している。 ヤブヒバリ属Mirafraはアフリカが分布中心で,低木が疎生する半乾燥草地にすみ,ときには開けた林でも見られる。…

【ヒバリ(雲雀)】より

…15属75種あまりに分類されるうち,アフリカにはその全属と約80%の種が分布している。アフリカから南アジアに広く分布するヤブヒバリMirafra javanica1種だけがオーストラリアまで分布を広げ,新世界のアメリカにはハマヒバリEremophila alpestrisただ1種が分布を広げ,そこで多様な環境に進出している。 ヤブヒバリ属Mirafraはアフリカが分布中心で,低木が疎生する半乾燥草地にすみ,ときには開けた林でも見られる。…

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