パラダイス文書(読み)パラダイスブンショ(英語表記)Paradise document

デジタル大辞泉 「パラダイス文書」の意味・読み・例文・類語

パラダイス‐ぶんしょ【パラダイス文書】

英領バミューダ諸島拠点を置く法律事務所などから流出した内部文書。2017年に国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が公開。1340万件に及ぶ顧客情報や登記文書で、前年パナマ文書に続き、世界各国の富裕層や大企業タックスヘイブンを利用している実態が明らかになった。

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共同通信ニュース用語解説 「パラダイス文書」の解説

パラダイス文書

タックスヘイブン(租税回避地)の法人設立に関する大量の書類で、回避地への法人設立を手がける法律事務所などから流出した。登記書類や設立申込書、法律事務所と関係者のメールまで含まれる。昨年のパナマ文書同様、欧州有力紙の南ドイツ新聞入手、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)を通じて各国メディアに共有された。合計で1340万通。各国の現・元首脳、政治家や企業関係者の名前が見つかった。(共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラダイス文書」の意味・わかりやすい解説

パラダイス文書
ぱらだいすぶんしょ
Paradise document
Paradise Papers

2017年11月に世界一斉に公表された租税回避地(タックス・ヘイブン)の利用実態に関する内部文書の総称。イギリス領バミューダ諸島発祥の法律事務所アップルビーシンガポールの法人設立サービス会社アジアシティトラストなどから流出した計1340万通の文書からなる。ドイツの有力紙南ドイツ新聞が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)や同連合加盟の67か国・地域の96報道機関(日本は朝日新聞社、共同通信社とNHK)とともに内容を分析・取材・報道した。情報の入手経路は明らかにしていない。

 租税回避地は英語ではタックス・ヘイブンtax havenであるが、フランス語やイタリア語などでは「税のパラダイス」(フランス語paradis fiscal、イタリア語paradiso fiscale)とよばれ、租税回避地がリゾート地に多いことから、同文書はパラダイス文書と命名された。なお南ドイツ新聞とICIJは2016年に租税回避地に関する別の内部文書「パナマ文書」を報道したことでも知られる。

 パラダイス文書は1950~2016年の租税回避地での登記書類、設立申込書、法律事務所と関係者間のメールなどからなり、バハマバルバドスマルタなど19の国・地域の文書が含まれる。その電子データ量は1.4テラバイトにのぼる。課税逃れや資金洗浄(マネー・ロンダリング)などの疑いのある世界の政治家、王族、経営者、著名人らの情報が含まれ、アメリカのロス商務長官の関連企業、ロシアのプーチン大統領の親族、カナダのトルドー首相の盟友、イギリスのエリザベス女王、アメリカの投資家ジョージ・ソロス、マイクロソフトの共同創業者ポール・アレン、アメリカの歌手マドンナ、アイルランドのロックバンドU2ボーカルのボノ、イギリスのF1レーサーのルイス・ハミルトンらの名が記載されている。企業ではアップル、ナイキといった多国籍企業の課税逃れの手法も盛り込まれ、日本では元首相の鳩山由紀夫(はとやまゆきお)などが含まれていた。なお、租税回避地の実態を明らかにした報道には、パラダイス文書、パナマ文書のほか、2007~2015年のスイスリークス、2013年のオフショアリークス、2014年のルクセンブルクリークスなどがある。

[矢野 武 2018年5月21日]

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知恵蔵mini 「パラダイス文書」の解説

パラダイス文書

タックスヘイブン(租税回避地)への法人設立を請け負う英領バミューダ諸島発祥の法律事務所「アップルビー」などから流出した機密文書の総称。各国の要人や要職経験者、富裕層が多額の資産をタックスヘイブンに置いている実態が明らかになった。2016年の「パナマ文書」と同様に欧州の有力紙である「南ドイツ新聞」が入手し、17年11月、非営利の報道機関・国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)を通じて各国メディアに共有された。アップルビーの内部文書683万件、シンガポールの法人設立サービス会社「アジアシティ」の内部文書56万6000件、マルタなど19の国・地域の登記文書604万件、計1340万6000件が流出したとされる。

(2017-11-7)

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