翻訳|Barbados
中央アメリカのカリブ海東部、小アンティル諸島中のウィンドワード諸島の東端にある島国。面積430平方キロメートル、人口30万2674(2022年推計)。首都はブリッジタウンBridgetown(人口市域約6000、2008年推計、都市圏約9万、2018年推計)。
島は褶曲(しゅうきょく)した堆積岩の上部に形成された石灰岩の何段もの段丘からなり、中央部には最高峰のヒラビー山(336メートル)がある。気候は熱帯性であるが、北東貿易風の影響を受けて比較的しのぎやすい。12~5月が乾期であり、6~11月の雨期には十分な降水量があるが、雨水はすぐに石灰岩の風化した土壌に浸透するので大きな川はない。降水量は海岸地域よりも中央部のほうが多い。島の南部では年降水量は約1600ミリメートル、1月の平均気温は25℃、7月の平均気温は27℃である。
[菅野峰明 2022年5月20日]
1536年ポルトガル人ペドロ・ア・カンポスPedro a Camposによって「発見」された。1627年イギリス人が島を占領し、1639年には新世界(南北アメリカ)で第三番目の議会を創設した。18世紀にはアフリカから黒人奴隷を導入し、プランテーションでサトウキビ栽培が行われた。バルバドス総督は、この島の西に連なるウィンドワード諸島のイギリス領を統治してきたが、1855年にはほかの島々から分離して一単位の植民地となった。1834年に奴隷制は廃止されたが、その後も白人のプランテーション所有者が政権を握っていた。1937年に黒人住民が暴動を起こし、1951年には普通選挙制が導入された。1958年にジャマイカなどとともに西インド諸島連邦を形成し、1961年に内政自治権を獲得したが、1962年には西インド諸島連邦は解体した。1966年11月30日にイギリス連邦の一員として独立した。
[菅野峰明 2022年5月20日]
2021年11月までは立憲君主制で、イギリス連邦の一員であり、元首はイギリス国王であった。イギリス国王の任命する総督が元首の権限を代行していた。2021年11月30日に立憲君主制を廃止して、共和制に移行したが、引き続きイギリス連邦にとどまっている。元首は大統領であり、行政権は首相および内閣にある。大統領は国会の上院と下院でそれぞれ3分の2以上の議員の賛成で選出される。上院は21人の議員から構成され、そのうち12人は首相の助言で、2人は野党党首の助言で、7人は大統領の裁量で任命される。下院は5年ごとの選挙によって選出される30人の議員からなる。上院と下院の議員の任期は5年である。行政権を行使する内閣は、首相と大統領の同意により首相が任命する5人以上の大臣で構成される。首相は、下院で過半数を占める政党の党首が大統領によって任命される。バルバドス労働党(Barbados Labour Party:BLP)と民主労働党(Democratic Labour Party:DLP)が二大政党であるが、バルバドス労働党は民主社会主義を、民主労働党は社会民主主義を掲げている。1994年の選挙で、民主労働党政権にかわってバルバドス労働党が政権の座についた。1999年1月の総選挙でも、バルバドス労働党が28議席中26議席を獲得して政権を維持したが、2008年の総選挙では、民主労働党が14年ぶりに政権を奪還した。2018年の総選挙では、バルバドス労働党が全30議席を獲得し、2022年の総選挙でも全議席を獲得した。
商品作物としてのサトウキビが西インド諸島のなかで最初に栽培された所であり、現在でもサトウキビ・プランテーション農業が経済の重要な部門である。サトウキビ・プランテーションは全耕地面積の半分以上を占める。プランテーションでのサトウキビ栽培は、安く豊富な労働力を利用することができるため、機械化は進んでいない。
工業は、サトウキビを原料とする砂糖、ラム酒の製造が中心であり、ほかに飲・食料品工業がある。また温暖な気候と美しい砂浜、整った観光施設によって北アメリカから多くの観光客をひきつけている。観光客は1960年代から1970年代にかけて急増し、観光業は重要な産業となった。その後、経済活動が多角化し、軽工業と観光がGDP(国内総生産)の4分の3を占めるようになった。バルバドスは西インド諸島の国々のなかでは1人当り所得が高い。また、オフショアバンキング(税金がゼロかあるいはきわめて安い国に銀行口座をもったり、投資すること)や情報サービスが重要な外貨獲得産業となっている。就業人口の71%は商業・サービス業などの第三次産業に従事し、農業就業人口はわずか3%にすぎない(2004)。おもな貿易相手国はアメリカで、ついでトリニダード・トバゴである。通貨はバルバドス・ドル(BDドル)。
[菅野峰明 2022年5月20日]
430平方キロメートルの国土に約30万人の国民が住み、人口密度は1平方キロメートル当り698人に達し、西インド諸島ではもっとも高い。住民はアフリカ系がもっとも多く(92%)、ついで混血(3%)、白人(3%)となっている。公用語は英語である。長い間、イギリスの植民地であったため、イギリス的な文化が一般的である。5歳から16歳の初等・中等教育は義務教育であり、国民の識字率はきわめて高い。ウエストインディーズ大学の分校がケーブヒルにある。そのほか島内には、バルバドス・コミュニティカレッジや教員養成大学などもある。宗教はキリスト教徒が多く、国民の約66%がプロテスタントで、カトリックが4%、その他のキリスト教徒が5%、無宗教が20%である。
[菅野峰明 2022年5月20日]
日本は、1966年(昭和41)のバルバドス独立と同時にこれを承認し、1967年に外交を樹立。日本は2016年(平成28)にブリッジタウンに大使館を設置した。バルバドスは駐日大使館未設置であるが、2019年(令和1)に在東京バルバドス名誉領事館を設置した。貿易では、バルバドスは日本へラム酒を輸出し、日本から自動車、船舶類を輸入している。
[菅野峰明 2022年5月20日]
基本情報
正式名称=バルバドスBarbados
面積=430km2
人口(2010)=28万人
首都=ブリッジタウンBridgetown(日本との時差=-13時間)
主要言語=英語
通貨=バルバドス・ドルBarbados Dollar
西インド諸島の東端,ウィンドワード諸島の東方160kmにあるバルバドス島から成る独立国。スペイン人がこの島を〈発見〉した際,一面に野生していた〈イゴス・バルブドスhigos barbudos(ヒゲイチジク)〉にちなんで名づけられた。〈カリブ海の小イングランド〉と呼ばれるほど,イギリス的雰囲気の濃い島である。1966年11月にイギリス連邦の一員として独立したのにともない,日本は同国を承認するとともに,67年9月,同国との国交を樹立した。
地形は比較的平坦で,最高地点でもヒラビー山の標高336mにすぎない。全島はサンゴ礁に囲まれていて,天然の港は首都ブリッジタウンだけである。気候は熱帯海洋性で,気温は年間を通じて最高30℃,最低22℃。ハリケーンの南限としても知られている。人種構成は黒人90%,混血5%,白人5%。国民の70%は英国国教会派で,ほかにメソジスト,カトリックの信者がいる。識字率は97.4%(1995)。
イギリス女王エリザベス2世を元首とし,総督が内閣の補佐を受けて代行する。議会は両院制で,上院は定数21名,総督が事前に政党党首と協議のうえ任命する。下院は定数28名で,選挙制。任期はいずれも5年である。政党にはバルバドス労働党(BLP),民主労働党(DLP),バルバドス民族党(BNP),独立グループなどがあるが,BLPとDLPの二大政党が交互に政権を担当している。バルバドス経済は,植民地時代からの主要産業に依存していて,国際砂糖価格の変動に応じて不安定な状態を続けている。そのほかの産業は観光,綿花栽培など。
1518年スペイン人がバルバドスを〈発見〉した際,アラワク,シボネイと呼ばれる先住民のグループがいたが,その後18年間にイスパニオラ島へ奴隷労働力として彼らを強制移住させたため,36年には無人島と化した。1624年イギリス人が来島し,3年後居留地を建設した。以後イギリス領となり,本国から年季契約移民による白人労働者や囚人が送り込まれてサトウキビ栽培が開始された。製糖業の急速な発展にともない,人口は1628年の1400人から42年には3万7000人に増加したが,その後は黒人奴隷労働力への依存が高まり,42年をピークにして,白人労働者は減少の一途をたどった。上記42年の白人人口は,バルバドス史上最高の数値である。製糖業の発展は,その後バルバドスの土地の狭さと土質の衰えから停滞の傾向をみせ,かつての繁栄の座をジャマイカ,ハイチ,キューバなどに奪われてしまった。しかし1834年に奴隷制が廃止されてからも,ひきつづき製糖業がバルバドスの基幹産業であることに変りはない。
1930年代の後半にイギリス領西インド諸島には人口急増と世界恐慌の影響で暴動が起こり,37年バルバドスでも,自治権の拡大,労働組合と政党結成の自由が認められた。58年西インド諸島連邦に参加したが,65年に脱退し,66年11月に独立した。1961年から15年間民主労働党が政権を担当していたが,76年の総選挙でバルバドス労働党が圧勝した。しかし,86年の総選挙では民主労働党が政権を奪回し,91年にも勝利を収めた。94年にはバルバドス労働党が返り咲き,オーエン・アーサー政権が続いている。97年にはカリブ共同体共同市場の最高裁判所がバルバドスに設置されることになった。
執筆者:神代 修
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現地音ではバーベイドスという。カリブ海,小アンティル諸島のうちのウインドワード諸島の一島。1627年からイギリス人の植民が始まり,やがてイギリス人の製糖産業の中心地の一つとなった。1958~62年西インド連邦に加盟,66年独立。イギリス連邦の一員で,使用言語は英語。人口の90%は黒人およびムラートだが,若干のインド系人もいる。使用言語は英語。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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