フェスク(その他表記)fescue

翻訳|fescue

改訂新版 世界大百科事典 「フェスク」の意味・わかりやすい解説

フェスク
fescue

イネ科ウシノケグサFestucaの植物の総称。ウシノケグサ属は一年草または多年草で,温帯から亜寒帯に分布し,約100種が知られている。重要な牧草あるいは芝草として利用されるものが多い。

 トールフェスクF.arundinacea Schreb.(英名tall fescue,tall meadow fescue)は和名オニウシノケグサといい,ヨーロッパ原産の多年草。夏に穂を出し,草丈50~150cmになる。地下茎によって広がり,根が深く,暑さや干ばつに強く,冬の寒さにもよく耐える。飼料に利用されるが,家畜の嗜好(しこう)性は劣り,栄養価も比較的低い。法面(のりめん)などの土壌浸食防止にも利用される。北日本各地で雑草化している。

 メドーフェスクF.elatior L.(英名meadow fescue)は和名をヒロハノウシノケグサといい,ヨーロッパからシベリアにかけての地域原産の多年草。夏に穂を出し草丈30~120cm。トールフェスクに似てやや小型。トールフェスク同様に利用されるが,飼料としてやや良質。日本各地で野生化している。

 レッドフェスクF.rubra L.(英名red fescue,creeping fescue)は和名オオウシノケグサ。北半球の温・亜寒帯に分布する多年草。匍匐(ほふく)茎により芝状となる型や,株状に立つ型など比較的変異が多い。草丈20~100cm,おもに芝用とするが,牧草に利用することもある。

 シープフェスクF.ovina L.(英名sheep fescue)は和名ウシノケグサ。北半球の温・亜寒帯に広く分布する多年草で,変異が多い。株状になり,草丈20~50cm。放牧地の牧草や土壌浸食防止に利用される。
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百科事典マイペディア 「フェスク」の意味・わかりやすい解説

フェスク

イネ科ウシノゲグサ属の総称。一年草または多年草で牧草として重要なものが多い。ヒロハノウシノケグサ(英名メドーフェスク)は多年草で,ヨーロッパ原産。高さ50〜120cmになり,葉は広線形で,幅4〜8mmとなる。6〜8月,やや大型の円錐形の花穂を出し,多数の小穂をつける。初め牧草として移入されたが,現在では路傍荒地に野生化しており,土壌保全用にも植えられる。近縁のオニウシノケグサ(英名トールフェスク)は全体が大形で,やはりヨーロッパ原産の帰化植物。ウシノケグサは北半球の温帯から亜寒帯に広く分布し,日本では日当りのよい高山〜山地に自生する。高さ20〜40cmと小型で,茎や葉は細くて硬い。

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世界大百科事典(旧版)内のフェスクの言及

【ウシノケグサ】より

…山地の乾燥地から高山帯の岩場にも生えるイネ科の多年草(イラスト)。茎と葉は細くて硬く,針のような感じで,多数密生して株を作る。茎は高さ20~40cm,基部から立つ。葉は強く内巻きの毛管状で,白緑色であるため銀針草(ぎんしんそう)の異名があり,欧米の庭園に植えられることもある。葉身は長さ10cmくらい,幅は0.2~0.5mmである。円錐花序は夏に現れ,長さは10cmくらいで,幅狭く,小穂はやや密に立ちぎみの枝につき,白緑色かわずかに紫色を帯びている。…

【ウシノケグサ】より

… ウシノケグサ属Festuca(英名fescue)は約100種あり,山野の雑草のトボシガラや,南ヨーロッパ原産の帰化植物のナギナタガヤがある。オニウシノケグサなどいわゆるフェスク類は優良な牧草であり,いくつかの種は芝生にも使われる。【小山 鉄夫】。…

【芝生】より

…北海道ではケンタッキーブルーグラスとその品種が広く庭園,公園などに使われている。(5)フェスク類 常緑型西洋芝。レッドフェスク,チューイングフェスクなどがあるが,日本では芝生用よりものり面緑化用によく使われる。…

※「フェスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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