古代地中海東岸に栄えた商業民族。エジプト,バビロニア,クレタの影響のもとに前15世紀頃から有力市(ウガリトおよびビブロス)の指導する都市同盟を形成,東部地中海の海上貿易に活躍。のち前12世紀頃からシドン,ティルスを中心としてイベリア半島沿岸まで進出,杉,銅,干魚,染料,奴隷を輸出,琥珀(こはく),錫(すず)を輸入して地中海貿易を独占した。この間にオリエント文明の西方への伝播者として,重要な役割を果たした(ことにアルファベット)。前8世紀以後は政治的独立を失い,アッシリア,アケメネス朝海軍の主力となった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…ヨーロッパの文化も海を利用してメソポタミア平原から,地中海沿岸各地をへて遠く北ヨーロッパ,イギリスまで伝えられた。その先駆的役割を果たしたのは古代フェニキア人であるが,彼らはさらに遠くサルガッソー海までも航海していたと考えられている。しかし,彼らは商船の運航ルートを秘密にしていたので,海図や文書が現存せず,ごく一部がギリシアに口伝えされたにすぎない。…
…旧約聖書中のカナン人の語源は,前14世紀の〈アマルナ文書〉などにみえるキナフKinaḫḫuであると考えられ,これは〈深紅色〉または〈赤銅色〉を意味し,この地方特産の染料の色,もしくは住民の肌の色に由来するとされる。フェニキア人という名称はギリシア語フォイニケスPhoinikes(ラテン語では主としてカルタゴ人を意味するポエニPoeni)であり,その意味はキナフと同様である。ギリシア人の伝説によると,テュロス王アゲノルAgēnōrの子の一人にフォイニクスPhoinixがい,そこからフェニキアという地名が起こったとされる。…
※「フェニキア人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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