地中海東岸のフェニキア人の古代都市。遺跡は1984年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。レバノン共和国の首都ベイルートの南南西約70キロメートルにあった都市で、ギリシア人がパライ・ティロスとよんだ都市は地中海岸にあったが、現在は地続きとなっている海峡を隔てた島にも広がった。ティルスはエジプトの文書にも書かれ、『旧約聖書』にもよく現れている。ツロともよばれ、ヘロドトスは紀元前2700年ころに創設されたとしている。アマルナ時代にはエジプトに服属していたが、前11世紀からカルタゴをはじめ各地に植民地を建設し、商業・貿易都市として栄えた。ダビデ、ソロモンはエルサレムの神殿建設に木材、金銀、工匠などの援助をティルスから受け、のちにはアッシリアの宮殿建築にもティルスは参加している。前7世紀アッシリアに攻められたが征服されず、また新バビロニアも征服に失敗した。前332年アレクサンドロス大王のときに征服された。金銀細工、ガラス器、紫染料などの生産と、商業、貿易に優れ、港湾都市として繁栄した。ローマ時代にも貿易都市として活躍したが、イスラム時代になってまったく没落した。
[糸賀昌昭]
古代フェニキアの有名な都市。テュロスともいう。レバノン海岸に位置する。エジプト第18王朝の保護のもとに貿易港として栄え,ソロモン王とも交易を行った。ティルスの植民市がカルタゴである。アッシリアのセンナケリブに破壊されたが,徐々にその勢力を回復,セレウコス朝時代,ローマ時代にも繁栄し,キリスト教の大司教区がここに置かれた。636年にアラブ人により破壊された。ティルスはさらに染色工業で著名である。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
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