翻訳|fork
ものを突き刺して運ぶための叉(プロング)のついた道具のことをいい,農具など大型のものもあるが,ここでは食卓用フォークについて述べる。古代から中世にかけてのヨーロッパでは,料理は指でつまんで食べたため,現在のようなナイフとフォークを組み合わせて使うことはほとんどなかった。ただし,調理の段階では鍋から肉を取り出すための長いフォークや,その肉を切り分ける際に用いる大型のものはあった。食卓用のものとして言及されたのは11世紀イタリアでの記録が最初で,実際には15世紀末ごろからイタリアで使われはじめ,16~17世紀に各地に伝わった。フランスにはカトリーヌ・ド・メディシスの持参品として移入され,イギリスには小説家T.コリアトがみやげとして持ち帰ったという。しかし一般庶民に普及するのはイギリスでは名誉革命(1688)以後,フランスではフランス革命(1789)以後のことである。初期には単純な2本プロングだったが,18世紀には4本プロングのものがつくられ,形態も洗練されていった。日本では江戸末期にオランダ人が使っていたものを〈ほるこ〉〈ほこ〉あるいは〈肉さし〉と呼んでいた。現在使われているフォークは肉・魚料理用のテーブルフォークとやや小型のデザートフォークに大別できるが,ほかに料理を取り分ける大型のカービングフォークがある。
ナイフ,フォーク,スプーンなどを総称して英語でflatware,silverwareあるいはsilver(必ずしも銀製とは限らない)というが,knife and forkといえば食事のことを指す。一方,ナイフを使わずにすむ簡単な食事をfork supperなどと呼ぶ。しかしフランスでdéjeuner à la fourchette(フォークによる昼食)といえば,正午ごろに食べる肉料理,ワイン付きの食事を指し(ドイツ語Gabelfrühstückも同義),〈良いフォークを持つ〉といえば大食のことである。フォークは東アジアのはし(箸)に相当するものといえるが,第2次世界大戦後は東南アジアでもフォークとスプーンの組合せを用いることが多くなった。
→ナイフ
執筆者:徳村 薫
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… 銘々膳が普及し,すべての食物をあらかじめ盛り分けて,膳の上に並べて供するという食事における食物の配給制が徹底したことが,日本の伝統的食べかたの特徴であり,それにともなって家族においても,誰の使用する食器かが区別され,食器の個人専用化がいちじるしい。 ナイフ,フォーク,スプーンを使用して食事をする風習が,ヨーロッパで普及するのは18世紀以後のことである。古代から,肉を切り分けるためのテーブルナイフは存在したが,1本のナイフで切り分けたのちには手づかみで食べた。…
※「フォーク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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