フォーチュン・ブランズ(読み)ふぉーちゅんぶらんず(その他表記)Fortune Brands, Inc.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォーチュン・ブランズ」の意味・わかりやすい解説

フォーチュン・ブランズ
ふぉーちゅんぶらんず
Fortune Brands, Inc.

アメリカの大手消費財メーカー。アメリカのたばこ会社アメリカンタバコAmerican Tobacco Co.を起源とするが、1969年、多角化を指向してアメリカン・ブランズAmerican Brands, Inc.と改称、たばこ事業撤退後の1997年に現社名となる。

[田口定雄]

アメリカン・タバコ

アメリカン・タバコは1890年、たばこ王と称されたデュークJames Buchanan Duke(1856―1925)によって設立された。1904年コンソリデーテッド・タバコ、コンチネンタル・タバコと合併。同社はほかの有力たばこメーカーの支配権を握って巨大トラストを形成したが、1911年に反トラスト法違反により解体され、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(現、BATインダストリーズ)、アメリカン・スナック、RJレイノルズなどの各社が分離された。その後もアメリカン・タバコは、ラッキー・ストライクLucky Strike、カールトンCarlton、ポールモールPall Mallなどの有名ブランドを育て、大手たばこメーカーとして発展する。

[田口定雄]

たばこ事業からの撤退

しかし、1960年代後半から嫌煙運動の広がりに対処して事業を多角化、スナック食品、酒類(1967年バーボン大手のジム・ビーム買収)、化粧品、文房具金物類、スポーツ用品、生命保険などの分野に企業買収を通じて進出した。一方、海外では、イギリス国内第2位のたばこメーカー、ギャラハーGallaher Ltd.を取得した。1987年、ナショナル・ディスティラーズ・アンドケミカル蒸留酒事業や、事務用品のACCOワールド社を買収。さらに同年、食品大手のベアトリスの非食品部門である持株会社E-Ⅱホールディングズからの買収の動きに対し、防衛のために逆買収提案し、1988年2月E-Ⅱホールディングズを取得、その14事業部門のうちキャビネット・メーカーのアリストクラフト、日記・手帳メーカーのデイ・タイマーなど5事業のみを残し、旅行かばんのサムソナイトなど9事業部門を売却した。アメリカン・ブランズはその後も、1991年にシーグラムの蒸留酒事業を取得、1993年にイギリスの酒造会社インバーゴードンを買収、1995年にはゴルフ用品大手のコブラ・ゴルフを傘下に加えた。

 1994年の売上高は150億ドルに達したが、その後は非戦略事業の売却に転じ、同年末、アメリカ国内のたばこ事業をBATインダストリーズに売却したのをはじめ、1995年には生命保険事業も売却して撤退、1996年にはギャラハーを分離独立させ、損害賠償訴訟に直面していたたばこ事業から完全撤退する。こうして家庭用品、オフィス用品、ゴルフ用品、蒸留酒・ワインの中核4事業部門に絞り、それぞれの市場で1位か2位の強いブランドをもつ消費財メーカーへの転換をほぼ完了。1997年、現社名に改めて再出発した。2008年の売上高は76億0890万ドル、売上げ1億ドル以上のブランド商品20品目をもつ。2008年現在で家庭用品・設備、ゴルフ用品、蒸留酒が事業の三本柱。

[田口定雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォーチュン・ブランズ」の意味・わかりやすい解説

フォーチュン・ブランズ
Fortune Brands, Inc.

かつてのアメリカ合衆国の酒類,家庭用品メーカー,コングロマリット。1874年ノースカロライナ州でたばこ事業を興したワシントン・デュークの息子ベンジャミン・ニュートン・デュークとジェームズ・ブキャナン・デュークの兄弟が 1890年に設立したたばこ会社アメリカン・タバコを前身とする。以後関連企業を吸収して発展。1966年サンシャイン・ビスケット,1968年ジェームズ・B.ビームを合併して食品,ウイスキー分野へ進出,その後も有力企業を買収してトイレタリー製品,事務機器,金物,家庭用品,ゴルフ用品,生命保険分野など多角化を推進した。1969年アメリカン・ブランズに社名変更。1971年イギリスのたばこメーカーのガラハーを買収。1994年アメリカン・タバコをイギリスの B.A.T.インダストリーズに売却し,1996年たばこ事業から全面撤退した。翌 1997年社名をフォーチュン・ブランズに変更。2011年家庭用品関連部門が分離独立して社名をフォーチュン・ブランズ・ホーム&セキュリティとした。残る蒸留酒部門は同 2011年社名をビームに変更,2014年にサントリーホールディングスに買収され,ビームサントリーとなった。

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