反トラスト法(読み)はんとらすとほう(英語表記)Antitrust Laws

日本大百科全書(ニッポニカ) 「反トラスト法」の意味・わかりやすい解説

反トラスト法
はんとらすとほう
Antitrust Laws

アメリカ合衆国独占禁止ないしは公正取引維持法の総称。1890年のシャーマン法および1914年のクレートン法が代表的なものである。アメリカ資本主義が発展するなかで、1870年代より過当競争を避けるべくプールカルテル)を通じた価格協定、生産制限などが行われ、80年代にはスタンダード石油をはじめとするトラスト化が展開され、さらに持株会社による企業集中が進められた。これら巨大企業の出現は独占による資本主義の弊害として多くの不安をよび、80年代末、中西部はじめ諸州で反トラスト法が制定された。それらが州際企業に無力なため、連邦法たるシャーマン法がつくられたが、それは「州際通商を制限する独占または結合を不法とする」というものの、無定義の簡単な法律にすぎなかった。95年、精糖の98%を支配するトラストが裁かれたが、製造過程は通商ではなく、かつ州内の問題とされ、同法骨抜きになった。一方、前年には鉄道組合のストが通商制限としてシャーマン法違反に問われた。革新主義時代、鉄道持株会社や石油トラストが同法により解散させられ、さらに補強立法としてクレートン法が制定され、また施行機関として連邦取引委員会が設けられた。しかし、その後の大企業容認の風潮のため、反トラスト法は独占禁止よりは不当競争制限を取り締まるものに変質したが、いまなおある程度は消費者保護に役だっている。また、その原理は日本やヨーロッパにも導入されている。

[長沼秀世]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「反トラスト法」の意味・わかりやすい解説

反トラスト法
はんトラストほう
antitrust laws

競争の制限もしくは市場の独占をはかるトラスト (企業合同) を制限または禁止する法律。 1890年代以降アメリカには巨大独占企業が続出し,これら企業のもたらす独占の弊害を防止するためシャーマン反トラスト法 (1890) ,クレイトン法 (1914) ,連邦取引委員会法 (14) の一連の独占禁止法が制定された。第2次世界大戦後にはイギリスの制限的取引慣行取締法 (56) ,西ドイツの競争制限禁止法 (57) ,日本の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 (いわゆる独占禁止法,47) などがその代表的なものである。

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