フタオガ(読み)ふたおが

改訂新版 世界大百科事典 「フタオガ」の意味・わかりやすい解説

フタオガ (双尾蛾)

鱗翅目フタオガ科Epiplemidaeの昆虫の総称。翅の開張1.5~3cmの小型のガを主体とする小さな科で,後翅外縁に2本の小さな突起をもつ種が多いのでこの名がある。熱帯地方が分布の中心だが,日本には18種を産する。成虫はおもに夜行性で,灯火に飛来するが,昼間活動するものもある。幼虫樹木灌木の葉を食べる芋虫で,白蠟物質で体の覆われた種もある。腹脚は尾脚を加えると5対ある。日本には,キンモンガフジキオビという,この科としては異質的な種を産する。いずれも中型(開張2~3.5cm),成虫は昼間活発に飛ぶ。キンモンガPsychostrophia melanargiaは,本州,四国,九州にごくふつうで,幼虫の食樹であるリョウブの周辺で飛んでいる姿がよく見られる。フジキオビSchistomitra funeralisは関東から中国地方,四国中央部などの山地に分布し,春に昼間活動する。幼虫はナツツバキの葉を食べる。両種とも成虫は花に飛来してみつを吸い,幼虫は白蠟に覆われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタオガ」の意味・わかりやすい解説

フタオガ
ふたおが / 双尾蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目フタオガ科Epiplemidaeの総称。この科は、開張15~30ミリの小形種を含む小さな科で、日本には16種を産する。後翅外縁には2本の小突起をもつ種が多いことからフタオガという名がつけられた。すべて夜行性で、よく灯火に飛来するが、昼間花を訪れる種もある。多くの種は、静止するとき、後翅を畳んで腹部に密着させるが、種によっては前翅も線状に畳むことがある。熱帯に栄えているこの科の幼生期や生態については、まだよく研究されていないが、日本では害虫として注目される種は発見されていない。幼虫の食樹としては、クロフタオEpiplema styxナナカマドハシドイ、クロホシフタオE. mozaがガマズミなどスイカズラ科、カバイロフタオE. simplexがヒメユズリハに寄生することがわかっている。

[井上 寛]

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