改訂新版 世界大百科事典 「ガマズミ」の意味・わかりやすい解説
ガマズミ
cranberry tree
Japanese bush cranberry
Viburnum dilatatum Thunb.
山野に普通にみられるスイカズラ科の落葉性低木。赤く熟した実を子どもが食べる。枝は柔軟性があり,しかも強靱で折れにくいため,道具類の柄にする。また枝をねじって薪をたばねるのに使ったり,かんじきの材料とする。魔よけになるとして杖にする地方もある。和名の由来はよくわかっていないが,ズミはすっぱい実の意味とする考えがある。高さ2~4m,よく分枝する。葉は対生し広卵形から円形,裏面には星状毛,単毛,腺点が多い。花は小さく多数集まって散房状となり,5月下旬から6月に咲き,特有のにおいを出し,虫がむらがる。花冠は白色,5裂し,直径約5mm。子房は下位,3心皮からなる特殊な側膜胎座型となっている。果実は球形で秋に熟し,鳥が食べる。核は扁平で楕円形,腹面に3本,背面に2本の浅い溝がある。北海道から九州,さらに朝鮮,中国に分布している。
ガマズミ属Viburnumはおもに北半球の温帯・暖帯に,一部が熱帯の高地さらに南アメリカに分布する。世界に約150種が知られているが,東アジアが分布の中心である。日本にはサンゴジュ,ヤブデマリなど15種が自生する。花や果実が美しいので,これらの種はしばしば観賞用に植えられる。コバノガマズミV.erosum Thunb.はガマズミに似ているが,名が示すように葉が小さく,葉柄が短く,花期は4月下旬から5月と少し早い。ミヤマガマズミV.wrightii Miq.は葉の形や葉柄の長さはガマズミに似るが,枝や葉の裏面などに絹毛が生え,星状毛がないことで区別される。前2種より高い所まで生育できる。オトコヨウゾメV.phlebotrichum Sieb.et Zucc.は花序の柄が細く,花の数が少なく,葉の裏面脈上に絹毛があり,乾くと黒くなる。常緑性のハクサンボクV.japonicum(Thunb.)Spreng.が本州暖地の沿海地から九州,琉球,小笠原に分布する。ゴマギV.sieboldii Miq.は葉をもむとゴマに似た強い臭気がある。ミヤマシグレV.urceolatum Sieb.et Zucc.var.procumbens Nakaiは高さ1m以下の小低木で,茎の下部は横にはう。カンボクV.opulus var.calvescens(Rehder)Haraは葉が3中裂し,装飾花がある。
執筆者:福岡 誠行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報