改訂新版 世界大百科事典 「ブーランビリエ」の意味・わかりやすい解説
ブーランビリエ
Henri de Boulainvilliers
生没年:1658-1722
フランスの思想家。ノルマンディーの貧乏貴族の出身。オラトリオ会の学校で教育を受けたのち,軍務に服したが,1683年ころより著述活動に入り,多くの著作を残した。哲学者としてはスピノザを駁し,占星術を論じたりもしたが,中心は歴史的著作であり,《フランス旧政体に関する歴史的覚書》(1727),《フランス貴族起源論》(1732)などがあり,また,17世紀末葉のフランスの社会状態についての貴重な資料とされる地方長官覚書を集大成した《フランスの状態》二つ折本3巻(1727-28)を編んだ。彼の歴史観・政治思想を特徴づけているのは,フランスの貴族の起源はゲルマンの貴き血に由来するとし,第三身分はガロ・ロマンの隷属民の裔(すえ)とする人種起源説であり,この点で,J.A.deゴビノーの人種不平等論の先駆とされる。ブーランビリエは,この観点から,貴族による統治の正当性を主張して絶対王権を批判した。
執筆者:二宮 宏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報