プラグマティッシェ・ザンクツィオン(読み)ぷらぐまてぃっしぇざんくつぃおん(その他表記)Pragmatische Sanktion ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

プラグマティッシェ・ザンクツィオン
ぷらぐまてぃっしぇざんくつぃおん
Pragmatische Sanktion ドイツ語

国事詔書と訳す。神聖ローマ皇帝カール6世Karl Ⅵ(在位1711~40)が1713年ハプスブルク家の全世襲領の永久不分割と一括相続のため発布した君主制定法。兄ヨーゼフ1世Josef Ⅰ(在位1705~11)が男系の相続者なしに没し、カールにも相続者がなかった。彼は帝位につくと、全家領を残すために、家憲として制定したが、公示することなく、16年長子レオポルトが夭折(ようせつ)。17年に生まれた長女マリア・テレジア(在位1740~80)への相続を確保しようとして、兄ヨーゼフの娘たちの女婿であるザクセンおよびバイエルン両選帝侯をはじめ帝国諸侯に対し、またイギリスやオランダに対しても海外進出を放棄するなどして幾多の譲歩を重ねた。家領内でも女系相続を認めないハンガリー承認をようやく得て、24年になり公示したが、カール6世の没後、マリア・テレジアは、プロイセン王フリードリヒ2世の介入によりオーストリア継承戦争に直面することになる。

[進藤牧郎]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 の解説

プラグマティッシェ・ザンクツィオン
Pragmatische Sanktion

本来,重要な国事(プラグマタとはギリシア語で「事実」の意)に関する君主の制定法のことであるが,1713年4月神聖ローマ皇帝カール6世が定めたハプスブルク家の家憲は最も有名。男子のないカールはこれにより同家の所領の不可分性と,マリア・テレジアによるその相続を確保しようとし,一応列国の承認を得たが,彼の死後オーストリア継承戦争が勃発した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のプラグマティッシェ・ザンクツィオンの言及

【オーストリア継承戦争】より

…神聖ローマ皇帝カール6世の長女マリア・テレジアのオーストリア継承をめぐって,1740‐48年に行われた戦争。この領土相続は,列国の承認をえた〈国事詔書(プラグマティッシェ・ザンクツィオン)〉にもとづくものであったが,40年10月,マリア・テレジアが父の死とともにオーストリアの君主になると,バイエルン,ザクセンおよびスペインは,領土的野心から約束を破ってこれに異議を唱え,ハプスブルクと長年敵対関係にあるフランスがこれを支持した。一方,プロイセン王フリードリヒ2世も,根拠のない要求権をかかげてオーストリアのシュレジエン州を占領したが(第1次シュレジエン戦争の開始),フランスはプロイセンとも同盟した。…

【ハプスブルク家】より

…兄皇帝ヨーゼフ1世(神聖ローマ皇帝,在位1705‐11)の死によってカール6世が皇帝(在位1711‐40)になると,ハプスブルク世界帝国の再現を恐れた西欧列強は1713年ユトレヒト条約を結び,スペイン王位はハプスブルク家を離れ,ブルボン家に移った。
[啓蒙君主たち]
 しかしオーストリア家はネーデルラントとイタリアの旧スペイン領を併せ,カール6世は同じ年の1713年国事詔書(プラグマティッシェ・ザンクツィオンPragmatische Sanktion)を制定し,広大な世襲領の永久不分割と長子相続を図ったが,継承者に男子を欠き,長女マリア・テレジアの一括相続のために譲歩を重ね,国際的承認を得ていた。しかしプロイセンのフリードリヒ2世大王がシュレジエンを占領,バイエルン選帝侯カール・アルブレヒトが相続権を主張すると,マリア・テレジアは40年オーストリア継承戦争に直面する。…

【マリア・テレジア】より

…ロートリンゲン公フランツ・シュテファンと恋愛結婚する。父の死後プラグマティッシェ・ザンクツィオンPragmatische Sanktionにより1740年に全ハプスブルク世襲領を一括相続するが,プロイセンのフリードリヒ2世のシュレジエン占領とバイエルン選帝侯カール・アルバートの相続要求によりオーストリア継承戦争に直面し,ハンガリー貴族の特権を認めて援助を受け,イギリス,オランダの支援をも得て,45年ドレスデンに和約を結ぶ。この戦争によってシュレジエンを失ったが,全世襲領とともに夫フランツ1世Franz I(在位1745‐65)に皇帝位を確保した。…

※「プラグマティッシェ・ザンクツィオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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