プラスチックフィルム(英語表記)plastic film

改訂新版 世界大百科事典 「プラスチックフィルム」の意味・わかりやすい解説

プラスチックフィルム
plastic film

二次元に広く延ばされた,通常厚さ0.1mm以下の薄いプラスチックシート。古くから天然セルロースを原料としたセロハンはよく知られていたが,フィルムが広く用いられるようになったのは近年のことである。第2次大戦後,〈ビニール〉と略称されたポリ塩化ビニルのフィルムが耐水性,強度にすぐれていたために,防水材料,雨具,包装材料として用いられたことに始まる。その後いろいろな合成樹脂から特徴のあるフィルムがつくられるようになり,それとともにフィルムの製造法も進歩した。今日ではスーパーマーケットの包装用袋から,カメラ,時計の電子回路用基板に至るまで広く用いられている。

おもなプラスチックフィルムの種類と特徴は次のとおりである。

(1)ポリエチレンフィルム 透明性,耐衝撃性,強度にすぐれ,安価でもあるので,一般包装用として用いられることが多い。とくに高密度ポリエチレンの極薄フィルムは,10μm(=0.01mm)ほどの薄さであるが強度がすぐれ,スーパーマーケットなどで従来の紙袋に代わって用いられ,急激に需要が伸びた。最近では線状低密度ポリエチレンもこの分野で期待されている。

(2)変性ポリオレフィンフィルム EVA,アイオノマーなどのポリオレフィン共重合体フィルムをいう。伸びやすく,強度も高く,ガスバリヤー性(気体を透過させない性質)にもすぐれているほか,安全性も高いので食品の直接包装用によく用いられている。最近ではポリブタジエンフィルムもこの分野で用いられはじめた。これらのフィルムで食品をおおい熱をかけるとフィルムが収縮するので,食品の形状に合わせた包装が可能となる。

(3)ポリプロピレンフィルム 透明性,耐水性,ガスバリヤー性にすぐれるほか,耐熱性もあり,金属の蒸着なども可能なので包装用に適している。タバコの包装紙,金属ラミネートフィルム,メタライジング(金属溶射)フィルムとして用いられている。工業用としては,誘電率が低いのでコンデンサー用に需要が多い。粘着テープ接着テープの基材としても価値が高い。

(4)ポリ塩化ビニルフィルム 耐候性がよく,安価なために,ビニルハウスのフィルム覆いなど農業用に用いられる。耐水性を生かした雨具としての用途もあるが,最近ではより強度の高い材料におきかえられている。

(5)ナイロンフィルム 耐熱性がよく,安全性が高いので,電子レンジ用の食品包装などに用いられている。

(6)ポリエステルフィルム 耐熱性,強度,電気特性にすぐれ,最もバランスのとれたフィルムである。最近ではオーディオ用,ビデオ用磁気テープの基材として需要が非常に高い。コンデンサー,その他の電気絶縁用,一般工業用,包装用など,あらゆる分野に用いられている。

(7)ポリ塩化ビニリデンフィルム ガスバリヤー性,強度,耐薬品性,安全性にすぐれ,家庭でのラップ包装に用いられている。

(8)フッ素樹脂フィルム 不燃性,耐候性にとくにすぐれ,高価ではあるがラミネート用保護フィルム(防食用など)として用いられるほか,電気的特性を生かした機能性フィルムとして用いられる。とくにポリフッ化ビニリデンフィルムには圧電性があることが知られている。

(9)ポリイミドポリアミドイミド)フィルム 耐熱性,電気特性にすぐれ,精密フレキシブルプリント配線の回路基板として用いられ,小型計算機,カメラ,時計などに組み込まれている。

プラスチックフィルムの成形法としては,セロハンのように,ポリマー溶液を凝固液中に押し出して固化させるキャスティング法casting,ポリ塩化ビニルフィルムなどのように,ポリマーに可塑剤,添加剤を加えて混合し,これをロール間に送って加熱圧延(カレンダーがけ)をくりかえしフィルム化するカレンダー法calendering(図1)などがあるが,最も一般的な方法は溶融押出法である。溶融押出法には次に述べるインフレーション法とT-ダイ法がある。

(1)インフレーション法inflation チューブラー法ともいう。環状のダイ(口金)から溶融ポリマーを筒状に押し出し,その中に空気を吹き込んで膨張させ,薄膜状の円筒として冷却固定させ巻き取る方法(図2)である。筒状物が直接得られるので袋などに加工するのは便利であるが,フィルム成形法としては成形速度,厚みむらなどに問題がある。この方法でつくられるフィルムはポリエチレンフィルムが最も多く,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニルなどのフィルム成形にも用いられる。

(2)T-ダイ法T-die extrusion 横長のダイから溶融ポリマーを冷却ロール(キャスティングロール)に押し出し,急冷固化させる方法(図3)であり,成形速度が速く,品質のコントロールにもすぐれている。ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミド(ナイロン),ポリエステルなどのフィルム成形に用いられる。得られたフィルムはこのまま使用される場合もあるが,さらに強度を増し,薄物化するために二軸延伸される場合が多い。すなわち,キャストされたフィルムは数倍の大きさに縦,横両方向に同時かまたは逐次,加熱,延伸配向され,次いで熱固定される(図4)。通常の高強度,透明,薄物フィルムはこの方法で得られる。

 代表的なプラスチックフィルムの性質は表に示すとおりである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「プラスチックフィルム」の解説

プラスチックフィルム

 各種の合成樹脂のフィルム状包装材.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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