翻訳|polyester
エステル結合-CO-O-を分子の主鎖中にもつ重合体(ポリマー)の総称。プラスチックボトル、プラスチックフィルム、合成繊維に大きな用途がある。熱可塑性の飽和ポリエステルと、熱硬化性の不飽和ポリエステルとがある。飽和ポリエステルの代表的なものはポリエステル繊維であり、不飽和ポリエステルはガラス繊維マットを基材にした強化プラスチックである。
[垣内 弘]
テレフタル酸とエチレングリコールとを混合して加熱する。生成する水を減圧で飛ばして重縮合させていくとポリエチレンテレフタレート(略称PET(ペット))になる。ポリエチレンテレフタレートは融点250~260℃であるから、窒素気流中で溶融して小さな孔(あな)から押し出すと単繊維になる。この繊維を日本では「テトロン」Tetoronとよんでいる。糸にするかわりに薄いフィルムにしたものがPETフィルムで、強靭(きょうじん)で容易に破れない。磁気記録媒体用ベースフィルム、とくに磁気テープ用PETフィルムとして使用されている。またPET製の瓶(ペットボトル)も多く生産され、その生産量は2001年(平成13)で66万2000トンである。
強度的により優れたポリエステルフィルムとして、テレフタル酸をナフタレン-2,6-ジカルボン酸に置き換えたポリエステルフィルム(テイジンQフィルム)、エチレングリコールのかわりにブタンジオールを用いたポリブチレンテレフタレート(略称PBT)などが開発されている。そのほかにフタル酸とグリセリンとからなる熱硬化性のグリプタル樹脂(アルキド樹脂の一種)をポリエステルに入れる場合がある。ポリエステル系合成繊維は、ポリアミド系(ナイロン)、ポリアクリロニトリル系(アクリル繊維)とともに、合成繊維の主力を占めている。
[垣内 弘]
『工業調査会編・刊『プラスチック技術全書13 ポリエステル樹脂』(1970)』▽『片岡俊郎ほか著『エンジニアリングプラスチック』(1987・共立出版)』▽『湯木和男著『飽和ポリエステル樹脂ハンドブック』(1989・日刊工業新聞社)』▽『守屋晴雄著『ナフサ体系の商品学』(1997・森山書店)』▽『日本化学会編、今井淑夫・岩田薫著『高分子構造材料の化学』(1998・朝倉書店)』▽『シーエムシー編・刊『ポリエステル樹脂総合分析』(2000)』▽『化学工学会SCE・Net編『進化する化学技術――オンリー・ワン技術への挑戦』(2003・工業調査会)』
主鎖中にカルボン酸エステル基を含むポリマーの総称.ポリエステルの最初の技術的な応用は,第一次世界大戦中におけるグリセリンとフタル酸とから生成する,主としてコーティングに使用されたグリプタル樹脂にはじまるが,科学的技術的な発展は,1920年代のR.H. KienleとW.H. Carothersの研究からはじまる.線状の単独重合ポリエステルは,二つのおもな形がある.一つは,ヒドロキシカルボン酸の自己エステル化によって生成するものであり,
もう一つは,ジオールとジカルボン酸との反応で生成するものである.
これらの反応は縮合反応であるので,ポリエステルは縮合型のポリマーに分類されるが,ラクトンの開環重合によってもポリエステルを合成することができる.
繊維として使用されるポリエステルのうち,もっとも広く使用されているのは,エチレンジグリコールとテレフタル酸のエステルであるポリエチレン=テレフタラート(PET)である.
このポリエステルは,またフィルムとしての性質もすぐれており,写真フィルム,包装用フィルム,コンデンサーなどの電気部品,磁気テープなどに多量に使用されている.また,飲物用ボトルとして使用されている.どちらかの成分,あるいは両方とも多官能性のものを使用すると,三次元的に架橋したポリエステル樹脂がつくられる.アルキド樹脂とよばれるものがそれである.グリセリンと無水フタル酸との縮合によるものが代表的な例であるが,この種の樹脂は反応を完全に行うと,不融・不溶となるため,反応を適当のところで止め,まだ熱可塑性の残っているプレポリマーの状態で成形加熱して硬化させる.この架橋を容易にかつ十分に行うため,とくに塗料などに使用する場合には適当な不飽和性を導入することが望ましく,成分として不飽和のカルボン酸などを加えることが行われる.さらにエチレングリコールとマレイン酸との縮合によって生成した直鎖状のポリエステルをまずつくり,この分子中の二重結合とスチレンのような不飽和化合物と触媒を加え,常温または加熱して付加重合反応を行わせて三次元的な構造をもつ樹脂に硬化させる.一般に,不飽和ポリエステル樹脂とよばれるものがある.この樹脂は耐候性,耐水性にすぐれており,ガラス繊維などと組み合わせて,機械的性質を強化して強化ポリエステル(FRP)として軽量構造材料などに重要な地位を占めている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
分子内に-CO-O-結合をもつ高分子化合物の総称。熱硬化性の不飽和ポリエステル樹脂やアルキド樹脂,ポリエチレンテレフタレートに代表される熱可塑性のポリエステルがある。一般には2価以上のアルコールと2価以上のカルボン酸の重縮合によってつくられる。
執筆者:森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ナイロン繊維の成功は,その後に合成高分子産業を興したのみならず,人々に化学に対する大いなる希望を与えた。 イギリスでウィンフィールドJ.R.WhinfieldとディクソンJ.T.Dicksonが発明し,50年にICI社が企業化したポリエステル繊維は,衣料用として優れた性質を有することがわかり,今日では世界で最も多く製造される合成繊維となった。イギリスではテリレンTerylene,アメリカではダクロンDacron,日本ではテトロンTetoronの商標で売られたが,多くの会社で作られるようになり,ポリエステルと一般的に呼ばれている。…
…まず,第1次大戦後からレーヨンが大量に生産されるようになり,化学繊維の工業化の道を開いたが,耐水強度が低いという欠点をもっていた。1930年代から製造され始めた合成繊維ナイロンは,原料が天然高分子でないため,従来の人造繊維と異なる優れた性質,とくに強度をもち,さらに50年代に入ると,アクリル繊維とポリエステルが大量生産される合成繊維の仲間に加わった。そのほかにも特徴をもつ合成繊維が数多く生産されている。…
※「ポリエステル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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