ヘルマフロディトス
Hermaphroditos
ギリシア神話の男女両性をそなえた神。ヘルメスHermēsとアフロディテAphroditēの合成語。オウィディウスの《転身物語》によれば,ヘルメスとアフロディテの息子で,泉のニンフ,サルマキスSalmakisに恋され,彼女と一体となったため,男女両性をそなえることになった,と説かれる。
美術作品としては,すでに前4世紀中ごろから立像のヘルマフロディトスが作られ(パリ,ビブリオテーク・ナシヨナル),最古のタイプと考えられている。造形上は,若いディオニュソスもしくはアポロンの姿を基本とし(ディオニュソスの従者としても表される),乳房のある少年,男根をそなえた女性として表現された。牧歌的主題を志向するヘレニズム文化においてヘルマフロディトスはかっこうの対象となり,文学・美術にしばしば取り上げられた。ヘレニズム後期には《まどろむヘルマフロディトス》(ルーブル美術館,ローマ国立美術館)など,美少年アッティスAttisの図像を借用し,裸体伏臥の姿で表されることが多く,帝政期ローマにも継承された。近世では,スプランヘル,F.アルバーニなどに作例がある。
→両性具有
執筆者:青柳 正規
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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「ヘルマフロディトス」の意味・わかりやすい解説
ヘルマフロディトス
ギリシア神話の両性具有神。ヘルメスとアフロディテの合成語。オウィディウス《転身物語》によれば,ニンフのサルマキスと一体となって両性をそなえることになったという。古代から美術作品も豊富。なお,ギリシア語の同義語にアンドロギュノスandrogynosがある。
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内のヘルマフロディトスの言及
【ヘルメス】より
…その後,ゼウスはわが子のこうした才をめでて,彼をみずからの使者,また地下の両神ハデスとペルセフォネの使者として,死者の霊魂を冥府へ導く役に任じたという。 かくして彼は,イオの見張りをしていた百眼の怪物アルゴスを殺し,美を競ったヘラ,アテナ,アフロディテの3女神をイダ山中のパリスのもとへ案内し,カリュプソの島からオデュッセウスを船出させるなどして,ゼウスの意向を伝達あるいは実行に移したほか,一部の伝承によれば牧神パン,愛の神エロスの父となったとされ,またヘレニズム時代以降に流布した神話では,アフロディテとの間に男女両性をそなえた神[ヘルマフロディトス]をもうけたと語られている。ヘルメスはたぶん,豊穣多産を祈って畑や牧場の境や路傍に立てられた[ヘルマイ]と称する石柱(上部が男の頭,その下の角柱の中央部に起立した陽物がついたもので,〈ヘルメス柱〉とも呼ばれる)に由来する神であったらしく,豊穣神から富と幸運の神に発展した彼は,商業,盗み,雄弁,競技などの守護神となる一方,ヘルマイが道標の役割をも果たしていたところから,道路,旅人の守護神ともなり,人間に最も親しい神のひとりとしてあがめられたものと考えられる。…
※「ヘルマフロディトス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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