ホラーサーン州(読み)ホラーサーン(その他表記)Khorāsān

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホラーサーン州」の意味・わかりやすい解説

ホラーサーン〔州〕
ホラーサーン
Khorāsān

イラン東部の州。北はトルクメニスタンと,東はアフガニスタンと国境を接する。州都メシェド。北部をほぼ東西にコペトダク山脈とエルブールズ山脈の延長が並走し,中南部の高山帯とともに砂漠に雪解け水を供給。山麓一帯にオアシスが分布する。オアシスを縫って隊商路が南北に州を縦貫し,幹線道路となっている。河川はすべて内陸河川で,末無川となって砂漠中に消滅する。年間を通じて流れのあるのは,北部のアトラク川,カレムーレ川,カシャフ川などだけで,南中部は涸れ川 (ワディ) である。気候はイラン国内で最も大陸性気候である。南部は塩砂漠が広がり,塩資源は膨大であるが未開発。小規模な灌漑農業牧畜が行なわれている。北部は雨量も多く土壌も肥沃コムギを多産する。主要な移出品はカーペット,生皮,皮製品,綿製品,羊毛トルコ石などである。歴史的には現在のイラン,アフガニスタンおよびトルクメニスタンの国境地帯にまたがる地域をいい,古代ペルシア語で「太陽の昇る地」を意味した。古来北方の遊牧民がイランやインドに侵入する通路にあたるとともに,東イラン系の文化的伝統を保持する中心地でもあるため,この地の維持はイラン高原を支配する諸政権にとって常に重大な課題であった。9~10世紀に,イラン勢力の政治的自立ペルシア文学の復興がなされたのもこの地においてであった。しかし,18世紀にいたり,この地はイランとアフガニスタンとに二分され,さらに 1884年一部がロシア領となって,ほぼ現在の国境線が画定された。住民は多種族にわたり,北部にはトルクメン人クルド人が,東部にはティームー人やジャムシディ人が住み,一部は遊牧生活を送っている。南部にはヘイダリー人,バルーチー人が住み,南西部には古イラン人が定住している。ほかにモンゴル系,アラブ系,ロマなどがいる。面積 31万5687km2。人口 528万605 (1986) 。

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