ホンヤドカリ
Pagurus geminus
十脚目ホンヤドカリ科の甲殻類。日本各地の岩礁にもっとも多い小型のヤドカリで,満潮線付近の石などに群れている。冬にはやや深みに移る。甲長約1cmほどで,雄のほうがやや大きい。一様にくすんだ灰緑色で,歩脚の指節の先半分だけが白い。はさみ脚は右側が明らかに大きく,左右とも粟粒状の顆粒(かりゆう)で覆われている。歩脚の指節は前節よりわずかに短い。腹肢(ふくし)は雄で3本,雌で4本が腹部左側にある。岩礁には小型の巻貝が多いためか,20種以上の貝を利用している。宿替えに際しては,右側のはさみを殻口にさし入れ,可動指を開いて貝の大きさを測り,体にあったものをさがす。北海道から九州および韓国に分布し,アメリカ西海岸のP.samuelisとは別種とされる。クロダイの釣餌になる。各地の内湾の干潟には,近縁のユビナガホンヤドカリP.dubiusが生息している。形態はよく似ているが,歩脚が細長く,とくに指節が前節よりも明らかに長い。
→ヤドカリ
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ホンヤドカリ
Pagurus filholi
軟甲綱十脚目ホンヤドカリ科 Paguridae(→ヤドカリ類)。甲長 1cmほどの小型種。北海道から九州までの外洋性の岩礁海岸の満潮線付近に最も普通に見られるヤドカリ。地味な暗緑褐色であるが,歩脚の先端部の白色が目立つ。20種以上の巻貝を宿として利用する。やや波が強い場所では近縁のケアシホンヤドカリ P. lanuginosus がすむ。内湾の潮間帯にはユビナガホンヤドカリ P. dubius が多く,また低潮線下にはヤマトホンヤドカリ P. japonicus,ベニホンヤドカリ P. similis が混生し,個体数も多い。ホンヤドカリ科は一般に寒海系で,例外なく右側の鋏が大きい。水深 30~200mにすむ種が多い。(→甲殻類,十脚類,節足動物,軟甲類)
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ホンヤドカリ
ほんやどかり / 本宿借
[学] Pagurus geminus
節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目ホンヤドカリ科に属する海産動物。日本全土と朝鮮半島の外洋性岩礁海岸にごく普通に生息する。満潮線付近に多く、干潮のときには石の下などに集まっている。20種以上の巻き貝を利用している。甲長1センチメートルほどの小形種で、濃い灰緑色のじみな色であるが、歩脚の先端部の白色がよく目だつ。はさみ脚(あし)は右側のものが大きい。左右とも毛はないが、とがった小さな顆粒(かりゅう)で覆われている。腹肢は雄では3本、雌では4本。抱卵期は11月から翌年3月。アメリカ太平洋岸のP. samuelisとは別種。各地の内湾の干潟には近縁のユビナガホンヤドカリP. dubiusが多い。この種は歩脚の指節が前節よりも明らかに長いので、ホンヤドカリとは容易に区別がつく。
[武田正倫]
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「ホンヤドカリ」の意味・わかりやすい解説
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世界大百科事典(旧版)内のホンヤドカリの言及
【ヤドカリ(宿借)】より
…十脚目ヤドカリ科Diogenidae,ホンヤドカリ科Paguridae,オキヤドカリ科Parapaguridae,オカヤドカリ科Coenobitidae,ツノガイヤドカリ科Pylochelidaeに属する甲殻類の総称。ふつうは腹部が軟らかいため,その名のように巻貝に入るが,成長につれて入る貝の大きさを変えていく。…
※「ホンヤドカリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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