家庭医学館 「ボツリヌス食中毒」の解説
ぼつりぬすしょくちゅうどく【ボツリヌス食中毒】
ボツリヌス菌で汚染された肉や魚肉は不十分な加熱で調理すると胞子(ほうし)が生き残ります。この食品を嫌気性(けんきせい)状態(酸素が不十分な状態)の室温で保存すると、胞子が発芽(はつが)・増殖(ぞうしょく)して毒素を生産します。このような食品(外国ではハムや缶詰、日本では東北地方や北海道の「いずし」「きりこみ」「すじこ」などが要注意)を摂取すると、毒素が胃や腸から吸収され、末梢神経(まっしょうしんけい)と筋肉が接合する部分をおかすので、まひがおこります。
発生はまれですが、死亡率50%の危険な食中毒です。
[症状]
摂食から発病までの期間は平均で12~24時間ですが、早ければ4~5時間です。
初め、倦怠感(けんたいかん)、頭重感(ずじゅうかん)とともに嘔吐(おうと)、腹部膨満(ふくぶぼうまん)、腹痛、下痢(げり)などの胃腸症状が現われ、ついで神経・筋肉のまひ症状がおこります。
まず、眼瞼下垂(がんけんかすい)(まぶたが十分に開かない)、複視(ふくし)(二重に見える)、視力の低下などの目のまひ症状が現われ、ついで、発語障害、嚥下困難(えんげこんなん)(飲み込みにくい)、呼吸困難などがおこり、原因食を摂取してから1週間前後で生命にかかわるようになります。
[治療]
抗毒素血清(こうどくそけっせい)を注射して、毒素を中和します。
予防には、正しい食品の管理が必要です。とくに、暖かい季節に「いずし」などをつくるのは避けます。