ボーカンソン(その他表記)Jacques de Vaucanson

改訂新版 世界大百科事典 「ボーカンソン」の意味・わかりやすい解説

ボーカンソン
Jacques de Vaucanson
生没年:1709-82

フランスの技術者。グルノーブル生れ。幼時より発明の才にたけ,26歳でパリに出て音楽,解剖学力学を学び,劇場用の自動楽器を研究した。のち工場の監督に任命され,歯車製造用のカッターを発明し,1745年に世界最初の力織機のモデルを製作,4年後には紋織機を着想し,半世紀後のジャカールによるジャカード織機発明への道をひらいた。また60年ころには全金属製の送り台付旋盤を製作している。自動人形の製作にも没頭し,オルゴール装置の〈笛吹き〉や,餌を食べたり鳴いたりする〈アヒル〉は名高い。なお1798年にパリに設立された国立工芸博物館は,ボーカンソンの機械のコレクションをもとにしたもので,ジャカールの研究は,その収集品にもとづくものであった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボーカンソン」の意味・わかりやすい解説

ボーカンソン
ぼーかんそん
Jacques de Vaucanson
(1709―1782)

フランスの機械技術者。グルノーブルに生まれる。青年時代に正確な時計を組み立てるなど機械製作に才能を示した。1735年パリに行き、解剖学、音楽、力学を学んだ。1738年自動的に横笛を吹く人形を製作し、大きな反響をよんだ。劇場用にさまざまな自動演奏装置を組み立てたが、大僧正(そうじょう)フルールAndré Hercule de Fleury(1653―1743)にその腕を買われ、1741年絹工場の監督になった。1745年、円筒の周りを動く穴あきカードの作用で自動的に針が選択される模様織機を製作、のちにジャカールに巧みに利用された。1746年科学アカデミー会員。

[高橋智子]

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世界大百科事典(旧版)内のボーカンソンの言及

【科学博物館】より

…一方,産業革命の進展は,人々の生活を大きく変え,その意識にも大きな影響を与え,とくに科学知識への関心を高めた。1798年,国民公会の要請によって,パリに当時の機械技術者として最高の評価を得ていたJ.deボーカンソンの考案・製作した科学機械を展示し,国民教育に役立てる目的で工芸博物館Conservatoire national des arts et métiersが創設され,さらに,1851年開催の第1回万国大博覧会の翌年には,ロンドンに工業博物館が設けられた。この博物館は57年にはサウス・ケンジントン博物館となり,さらに,これから分離された科学部門が1909年独立して現在の科学博物館として発足したが,このロンドンの科学博物館は現在でも世界で屈指の科学博物館として,その歴史とともに収集資料の質および量の高さを誇っており,多くの研究者が,この博物館の独立創立をもって,近代科学博物館の始まりとしている。…

【からくり】より

…いっぽう中世ヨーロッパのめぼしい都市には,ほとんどの市庁舎や教会の塔に大がかりな機械時計がそなえつけられ,その時計にはかならず〈ジャクマールjaquemart〉と呼ばれる自動人形が出てきて鐘を打ち,さらに聖人の像が窓にあらわれ,等身大の美女が舞踏したり,男女の人形が行列したりする。ルネサンスの天才レオナルド・ダ・ビンチが自動仕掛けの人工ライオンをつくったという話があるが,近世ヨーロッパでは自動装置の人工庭園をつくることが流行し,やがて17世紀には機械時計や精密工芸の成長を背景に,自動仕掛けの〈鳴く鳥〉や〈ダンス人形〉をつくる実験がはじまり,18世紀になるとフランスの機械技術者ボーカンソンやスイスの機械人形師ジャケ・ドローズ父子が登場する。ボーカンソンの精巧な音楽人形やジャケ・ドローズの歯車仕掛けで字や絵をかく自動人形は,当時の人々を驚嘆させ,いっぽうその自動機械の存在は哲学者デカルトやラ・メトリーに人間機械論を着想させた。…

※「ボーカンソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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