マリタン(読み)まりたん(英語表記)Jacques Maritain

デジタル大辞泉 「マリタン」の意味・読み・例文・類語

マリタン(Jacques Maritain)

[1882~1973]フランス哲学者。初めベルクソンの「生の哲学」に傾倒、カトリック入信後はネオ‐トミズム立場から近代思想批判、実存主義的ヒューマニズム提唱した。著「認識の諸段階」「キリスト教民主主義」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「マリタン」の意味・読み・例文・類語

マリタン

  1. ( Jacques Maritain ジャック━ ) フランスの哲学者。カトリック革新運動の指導者。新しいキリスト教的、実存主義的ヒューマニズムを提唱。主著「キリスト教と民主主義」「ベルグソン哲学」「霊性優位」。(一八八二‐一九七三

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリタン」の意味・わかりやすい解説

マリタン
まりたん
Jacques Maritain
(1882―1973)

フランスの哲学者。パリに生まれる。1913年よりパリ・カトリック学院の教壇に立つ。第二次世界大戦中はカナダに亡命。1945~1948年駐バチカン市国大使。1948年よりアメリカのプリンストンその他の大学に籍を置いて活躍、1961年帰国した。彼は初めソルボンヌ大学(パリ大学)で哲学と自然科学を学んだが、やがてベルクソンの「生の哲学」に傾倒した。だがカトリックに入信し、聖トマスの教説に接して開眼するとともにベルクソン哲学とも決別した。彼は一般に新トマス主義者とよばれている。著書も多く、また論じたテーマも各方面にわたり、日本でも戦前岩下壮一(いわしたそういち)、吉満義彦(よしみつよしひこ)などのカトリック系哲学者たちに大きな感化を与えた。

[西村嘉彦 2015年6月17日]

『三嶋唯義著『ジャック・エメ・アンリ・マリタン』(澤瀉久敬編『現代フランス哲学』所収・1968・雄渾社)』『Jean DaujatMaritain un maître pour notre temps (1978, Téqui, Paris)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マリタン」の意味・わかりやすい解説

マリタン
Maritain, Jacques

[生]1882.11.18. パリ
[没]1973.4.28. ツールーズ
フランスの哲学者。ネオトミズム代表者の一人で,同時に哲学の全領域にわたって自説を展開している。パリ大学で自然科学と哲学を学び,のちベルグソンを知って形而上学に開眼。 1904年詩人ライサと結婚し,06年2人でカトリックに入信。 06~08年ハイデルベルクのドリーシュのもとで生物学を学び,パリに帰ってからはベルグソンを批判,トマス哲学への傾斜を深めた。 14~39年パリのカトリック大学の近代哲学の教授。 33年からカナダ,トロントの中世研究学院の教授となり,41~42年アメリカのプリンストン大学,41~44年コロンビア大学の客員教授をつとめた。 45~48年バチカン駐在のフランス大使,48~60年プリンストン大学哲学教授。 58年ノートル・ダム大学にジャック・マリタン・センターが創立された。主著『ベルグソン哲学』 La Philosophie bergsonienne (1913) ,『芸術とスコラ哲学』 Art et scolastique (20) ,『認識の段階』 Distinguer pour unir,ou les degrés du savoir (32) ,『道徳哲学』 La Philosophie morale (60) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「マリタン」の意味・わかりやすい解説

マリタン
Jacques Maritain
生没年:1882-1973

フランスのカトリック思想家,現代トミズムの代表的哲学者。トミズムが神学校の枠を超えて広く学界や論壇で影響力を及ぼすようになったのはマリタンの力によるところが大きい。トロント,シカゴ,プリンストン,ノートル・ダムなどの大学で教えたが,思想家としてのマリタンの本領は,知識人としてフランスおよび世界の社会的・政治的情勢に深くかかわりつつ,カトリック信仰とトマス哲学の原理にもとづいて,預言者的発言を行ったところにある。1961年以後はフランスのトゥールーズの修道院に隠遁して,そこで没した。主著として《認識の諸段階》(1932),《全きヒューマニズム》(1936),《人間と国家》(1951)などがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「マリタン」の意味・わかりやすい解説

マリタン

フランスのカトリック哲学者。20世紀におけるトミズムの第一人者。アメリカ,カナダでも教え,トマス思想の世界的復興に尽力した。主著《認識の諸段階》(1932年),《全きヒューマニズム》(1936年),《人間と国家》(1951年)。
→関連項目吉満義彦

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「マリタン」の解説

マリタン
Jacques Maritain

1882~1973

フランスの哲学者。カトリック神学の立場に立つ。近世哲学が思惟と存在を一次元に統一したのに反対し,天使ではない人間はその所属すべき存在の階層を見出すべきだとする。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「マリタン」の解説

マリタン
Jacques Maritain

1882〜1973
フランスの哲学者
現代カトリック思想の代表者のひとり。トマス=アクィナスの思想に傾倒し,その思想を現代に復興しようとする立場をとった。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android