日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドリーシュ」の意味・わかりやすい解説
ドリーシュ
どりーしゅ
Hans Driesch
(1867―1941)
ドイツの発生学者、哲学者。フライブルク、ミュンヘン、イエナの各大学に学び、のちにナポリの臨海実験所で実験発生学に従事。主としてウニ初期胚(はい)を個々の割球(細胞)に分割したり2個のウニ卵を融合させたりする実験から、個々の割球の発生運命はその部分の全体に対する関係によって決定されるという調和等能系という考えを主張し、さらに、そのような特性は機械論からは導かれないとして、新生気論とよばれるエンテレヒー(エンテレキー)説を唱えた。1921年以後はライプツィヒ大学の哲学教授となり、自らたてたエンテレヒー説を正当化しようとした。この説では、個々の生体部分が発生運命のいくつかの可能性のなかからあるものを実現させる超自然的因子としてのエンテレヒーを含んでいるとされた。主著に『生物哲学』(1909)がある。
[八杉貞雄]