日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムモンアカシジミ」の意味・わかりやすい解説
ムモンアカシジミ
むもんあかしじみ / 無紋赤小灰蝶
[学] Shirozua jonasi
昆虫綱鱗翅(りんし)目シジミチョウ科に属するチョウ。極東アジア北部(中国北部、朝鮮半島、日本)の特産種。日本では北海道、本州(東北地方から中部地方と広島県下)に分布、近畿地方、四国、九州およびそれより以南の地域には生息しない。はねの開張40ミリメートル内外。はねの地色は橙(だいだい)色、日本産のほかのアカシジミ類(アカシジミ、ウラナミアカシジミ、チョウセンアカシジミ)に比べて、はねの斑紋(はんもん)が目だたないので、この和名がある。年1回の発生(7~9月)で、ほかのアカシジミ類に比べると発生期は遅く、8月にも新鮮な個体が多い。産卵は主としてブナ科のカシワ、ミズナラ、コナラ、クヌギなどに行われ、幼虫はそれらの樹木に寄生するアブラムシやカイガラムシなどの動物食をとる。葉を食べることもあるがその量は多くない。幼虫の発生する樹木はブナ科に限らず、ハルニレ、シラカバ、ヤマウコギ、ハシバミ、ネズミサシ、ヤマモミジ、オニグルミ、カラマツなど多くの植物にも幼虫がみられることがある。越冬態は卵である。
[白水 隆]