モロ・イスラム解放戦線(読み)もろいすらむかいほうせんせん(英語表記)Moro Islamic Liberation Front

知恵蔵 「モロ・イスラム解放戦線」の解説

モロ・イスラム解放戦線

南部フィリピンのミンダナオ島西部とスールー諸島に集住するイスラム教徒(全人口の約5%、350万人)の分離独立要求などを掲げる武装闘争組織。MILFは、マニラ中東で高等教育を受けた新世代リーダーたちがマルコス政権下の1960年代末に組織したモロ民族解放戦線(MNLF:Moro National Liberation Front)から70年代後半に分派したグループが、ハシム・サラマット議長を指導者に84年に旗揚げした。MNLFは、96年にインドネシアなどの仲介でラモス政権と和平合意し、南部に「モスリム・ミンダナオ自治区(ARMM)」(当初、4州で構成、その後に5州1市に拡大)が設けられて体制組織に転換。だがこのARMMの運営などに対する不満派がMILFに合流。サラマット議長は2003年7月死去、ムラド司令官が後任議長に就いた。MILFは、マレーシアの仲介で、アロヨ政権が後押しするMNLF指導部との統合などに向けた和平交渉を進めているが、先祖伝来の土地の認定・線引きなどをめぐって交渉は一進一退が続いている。南部では90年代初頭、イスラム過激派組織アブサヤフ(Abu Sayyaf)も結成され、テロ資金稼ぎの誘拐事件などを繰り返している。米国は、国際テロ組織アルカイダやジェマー・イスラミア(JI)とのつながりがあるとみて、01年の9.11米同時多発テロ事件以降、アブサヤフを「対テロ戦争」の標的にしている。

(大野拓司 朝日新聞記者 / 2008年)

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デジタル大辞泉プラス 「モロ・イスラム解放戦線」の解説

モロ・イスラム解放戦線

《Moro Islamic Liberation Front》フィリピン南部のミンダナオ島中部の各州、南西部のスールー州、バシラン州などで活動する反政府武装組織。モロ族の自治権確立を目標に掲げる。1976年の「モロ民族解放戦線(MNLF)」と政府の停戦合意に反対する勢力が離反して結成。1981年にミンダナオ島に本拠地を設立、1984年より現組織名を名乗り武装闘争継続を宣言。2003年以降和平路線に転じ、一部強硬派は離脱。2012年には政府との間の和平枠組みに合意。モロ族自治区の建設について政府との交渉を継続している。

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