ユウフツ（読み）ゆうふつ

日本歴史地名大系

ユウフツ
ゆうふつ

• 北海道：胆振支庁
• 苫小牧市
• ユウフツ

漢字表記地名「勇払」のもとになったアイヌ語に由来する地名。場所名・コタン名のほか河川名としても記録されている。天保郷帳には「ユウブツ持場」のうち「ユウブツ」とみえ、当地一帯は近代に入り勇払（ゆうふつ）村に包含された。仮名表記は「ユウフツ」（「蝦夷巡覧筆記」「西蝦夷地日記」「高島日記」「東行漫筆」「場所境調書」など）、「ユウブツ」（「夷諺俗話」、木村「蝦夷日記」、「蝦夷日誌」一編、「観国録」など）が多いが、古くは「いふつ」（「津軽一統志」など）の表記があり、そのほか「イブツ」（蝦夷志）、「ゆふぶつ」（蝦夷巡覧筆記）などもある。漢字表記では「勇武津」（西蝦夷地日記・駅路抵記・東蝦夷地場所大概書）、「裕富津」（行程記）などがみられる。「ユーブツ」とする秦「地名考」は語義について、「古名ユーブトと云。ユーは湯なり。ブトは湊の名、又、河水の落合を云。此河源キムンゲツプトウと云湖水にて水ぬるミ流るれはなり」とし、「ユウブツ」とする「地名考并里程記」は「夷語ユウブの略語なり。則、温泉の口と云ふ事。扨、ユウとは温泉の事。ブとは水口の事にて、此川の枝流所々に温泉のあるゆへ、地名になすといふ」とする。板本「東蝦夷日誌」も「名義、イウブツ也。イウとは温泉、ブツは口也。此川上に温泉有る故に号く」とほぼ同様に解釈している。木村「蝦夷日記」は「ユウブツ川　弁天流寄故ニ名ク」（寛政一〇年六月五日条）と述べ、「遊仏」の漢字を当てるなど日本語による解釈をしている。「いふつ」は「津軽一統志」のほか「狄蜂起集書」「蝦夷蜂起」などシャクシャインの戦に関する記録にみえ、「蝦夷蜂起」には「蠣崎作左衛門あつまに罷在、いぶつ辺の夷共につくなひ申懸呼寄申候」とあり、松前へ連行した「むかわ」より「いふつ」までの「頭分の者共」のうち七人は病死したが、四人はのちに「いふつ」へ帰したと記される。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」