翻訳|luge
人工氷で固めた走路を手綱と足首でそりを操作して滑走する競技。本来はフランス語で木ぞりの意味で,英語ではトボガンtobogganという。ボブスレーと並ぶ冬季オリンピックの競技種目だが,プラスチック製あるいは木製でブレーキやハンドルがない点でボブスレーと区別される。
木ぞりはヨーロッパの降雪地帯で古くから交通機関や荷物の運搬用として使われていたが,17世紀半ばから戸外の遊びにも使われ始めた。最初にスポーツとして現れたのはスイスで,1881年にはダボスで初のスイス国内競技会が開かれた。しかし,90年代に入ると木製のそりにあきたらない人たちが鋼鉄製のそりを作り大型化が進んだ。そして競技的には木製のそりがリュージュ,鋼鉄製がボブスレーへと分化していった。1923年に国際ボブスレー・トボガニング連盟(FIBT)が創設されたが,57年に国際リュージュ連盟Fédération Internationale de Luge de Course(FIL)として独立している。加盟国49ヵ国(2007現在)。64年の第9回インスブルック大会からオリンピックの正式種目として認められた。ドイツ,オーストリア,イタリアなどで盛んな競技である。日本には第2次世界大戦後アメリカ軍の進駐によって移入された。1963年日本リュージュ連盟が設立されたが,国内的には〈そり競技〉として組織を一つにすることになり85年日本ボブスレー・リュージュ連盟に統一された。
山腹の北側斜面に作られた全長1000~1500m,標高差110~130m,平均斜度10%程度の氷で固めたコースを滑り降りる。コースには直走路のほかに左右へのカーブ,S字カーブ,ヘアピンカーブ,ラビリンス(迷路)が配置され変化に富んでいる。最高時速は120km前後。一般には時速80~90kmのスピードで滑走するため,選手がコースから飛び出さないようカーブの外壁は2~7mの高さに作られている。種目は男女各1人乗り,男子2人乗りの3種目があり,1人乗りは4回(2日),2人乗りは2回(1日)の滑走タイムの合計で順位を決める。
そりはプラスチック製あるいは木製で,重量は手綱,シートのクッションなど付属物を加え,1人乗りが23kg,2人乗りが27kg以内となっている。そりの滑走部(ランナー)だけにスチールが取り付けられ,2本のランナーの間隔は45cm以内と決められている。そりには空気抵抗を少なくするため両足を伸ばし,あおむけに寝る姿勢で乗り,そりの先端を足首で挟んで方向をコントロールする。欧州アルプス周辺の国が強いが,ボブスレーほどの体重を必要とせず,日本選手でも1972年の札幌オリンピックでは4位入賞を果たしている。
執筆者:加藤 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
選手がそりに背面仰臥(ぎょうが)姿勢(あおむけ)の滑走フォームで乗り込み、足先から氷上コースを滑走し、その速さを競い合う競技。リュージュlugeとは、フランス語で「木製そり」を意味することばである。リュージュ競技は、1964年の第9回冬季オリンピック・インスブルック大会(オーストリア)から正式競技として採用されている。
スタート時は、リュージュそりに座った状態で、反動をつけてスタートハンドル(スタート地点に設置されている握り手)を押し、直後にパドリング(両手で氷上をかく)動作を数度行った後に、すぐさまにあおむけの姿勢をとり、つまさきを伸ばして滑走していく。滑走中も、そのままあおむけの水平姿勢をとり、空気抵抗を少なくするようにして滑り降りる。そりにブレーキや操作用のハンドルはなく、両足で木製のクーヘとよばれる部分(刃をつける土台)の先端を挟み、要所で押し込むように操作しながら滑走する。最高速度は、トラック(競走路)によって違いがあるが、カナダのバンクーバートラックの場合、男子スタート位置からは時速150キロメートル以上にも達する。
一般に体重が重いほうが有利であり、選手は負荷重量とよばれる「おもり」をその体重に応じて装着することが許される。このほか、スタート時のそりの刃の温度計測規定(所定の温度を超えると失格になる)など、さまざまなルールに従って競技が進行される。
そり遊びから発展してきたリュージュ競技には、その使用コースによって、人工凍結コースartificial trackと天然トラックコースnatural trackがある。それぞれに、コース設計や使用するそりなどに違いがみられる。冬季オリンピック大会に採用されているのは、トラックに冷却剤を通すパイピング工事を施した人工凍結コースである。人工凍結コースにおいては、全長1300メートル前後(女子、2人乗りは1000メートル前後)、標高差100メートルほどのコースとなっている。
冬季オリンピック大会では、男子1人乗り、女子1人乗り、2人乗り、チームリレー(団体戦)の種目が行われる。チームリレーは、2014年のソチ大会(ロシア)から採用され、前走者がフィニッシュした直後に次の滑走者がスタートするもので、3台1チームとなって競技する。3台のそりがリレーしていく形式になるので、たいへんスリリングな競技となっている。
[百瀬定雄]
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(折山淑美 スポーツライター / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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