日本大百科全書(ニッポニカ) 「トボガン」の意味・わかりやすい解説
トボガン
とぼがん
toboggan
木製の舵(かじ)なしそりのことで、イギリス、カナダではトボガンとよぶが、中部ヨーロッパではローデルともよんでいる。トボガンは積雪地方では古くから荷物の運搬や交通用具として使用されていた。交通用具はやがて戸外の遊び道具に活用され、1650年ころにはスポーツとして発展した。初めは雪の斜面の滑走程度だったが、1870年代には直線路と曲線路を案配したコースができ、さらに1880年代に入るとスイスでは競技を行うまでになった。そりの長さは2.5メートル前後、幅90センチメートル前後で、平板で雪面に接し、先端は雪をよけるように曲げてある。トボガンがスポーツ化するとともに研究は一段と進み、1888年スイス人マチスChristian Mathisが鋼鉄で舵と制動機を備えたそりを試作、さらに改良されて現在のボブスレーとなった。
他方、舵なしそりの流行は1880年ころからスイスのサン・モリッツ地方にスケルトンとよぶ木ぞりを生んだ。スケルトンはランナー(滑走部)とシャーシ(車台)のみの単純な構造となっている。
トボガンはまず平板の木ぞりとして発達し、ランナーがつけられて、やがてボブスレーとなり、リュージュとなり、他方、スケルトンとなった。1923年これらを競技として統括する国際組織として国際ボブスレー・トボガニング連盟が生まれてトボガンは歴史的名称としてとどめられた(リュージュ部門は1957年に独立し、国際リュージュ連盟を設立)。現在ボブスレー、リュージュ、スケルトンとも冬季オリンピック大会の正式種目となっている。
[両角政人]