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ロマ問題 ろまもんだいRoma problem

知恵蔵の解説

ロマ問題

1989年の体制転換後、東欧諸国で表面化した民族問題。ロマ(ジプシーは他称)は現在でも東欧諸国に多く居住しており、依然として、差別と抑圧の対象となっている。顕著な例がチェココソボでみられた。体制転換後、93年1月からスロバキアと分離したチェコは東欧諸国から移住してきた多くのロマを抱え込んだ。99年春、プラハの北、ドイツとの国境沿いの町ウスチで、市当局は人権擁護団体の反対にもかかわらず、騒音やゴミの被害を理由として、ロマが居住する集合住宅を壁で覆い隔離した。この壁は人種差別の象徴として、国際的な問題となった。欧州連合(EU)加盟を控えているチェコにとって、これは大問題であり、同年10月にチェコ議会は市当局に対して、壁の撤去を命じた。これに不満を持つ市当局は憲法裁判所に提訴、2000年4月に出た判決では、チェコ議会がロマ差別に対して道義的批判をする権利を認めながら、同時に議会の地方自治への介入は違憲だとした。チェコにとってロマ問題は、EU加盟や地方自治の確立と関連し微妙な問題となっている。一方、コソボでは、紛争中にロマがセルビア人の先兵としてアルバニア人攻撃をしたとして、アルバニア人の報復行為が続いた。コソボを追われたロマはセルビア、マケドニア、モンテネグロなどで帰還できる日を待っている。紛争前に6万〜10万人とされたロマは、現在4万人ほどに減少。これらの事件を背景として、00年7月末、国際ロマ連合(IRU)の第5回会議が10年ぶりに、ロマ問題の象徴ともいえるプラハで開かれた。この会議で、コソボ紛争の忘れられた犠牲者ロマに対する国際的な支援が呼びかけられた。02年に米国で出版されたバラニ著『東欧のジプシー』を契機として、ユダヤ人、ポーランド人に次ぐナチス・ドイツの犠牲者ロマのホロコーストの実情が明らかにされつつあり、注目を集めている。

(柴宜弘 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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