一臈(読み)いちろう

精選版 日本国語大辞典 「一臈」の意味・読み・例文・類語

いち‐ろう ‥ラフ【一臈】

〘名〙
① 仏語。出家受戒後、安居(あんご)を一度終えたこと。法臈一歳と数える。また、転じて、年功を積んだ僧、最上位の僧の意にも用いる。
今昔(1120頃か)二八「金峰山別当は、彼の山の一臈をなむ用ける」
② 一般に、年功を積んで長老となった人。最長老。また、集団の筆頭。
※とはずがたり(14C前)一「すでに、身、正二位大納言、一らう、氏の長者をけむす」
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)二「けんげうの一臈御職のいゑにあつまりて」
③ 六位の蔵人の上首。極臈(きょくろう)。その下に、二臈、三臈などがある。〔侍中群要(1071か)〕
平家(13C前)五「当座に一廊(いちらう)を経ずして、右馬允にぞなされける」
④ 鎌倉幕府で、当番人の筆頭。
※平家(13C前)八「大宮のさぶらひたつし工藤一臈(いちらう)祐経是をひく」
舞楽で、舞人の前列に立つ第一の人。左舞では前列の左(正面から見て舞台右側)、右舞では前列の右に位する。一者(いちのもの)
⑥ 人の誕生後七日め。
[語誌]僧侶が一夏の安居(九十日間、一室に籠って修行すること)を終えることを「臈」といい、その数により僧侶間の席次が決まった。これが俗社会、特に宮中に転用され、②のように官吏女房年功序列を示すのに使われた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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