仏教の出家修行者たちが雨期に1か所に滞在し、外出を禁じて集団の修行生活を送ること。サンスクリット語バルシャーバーサvārāvāsaの訳。雨(う)安居、夏(げ)安居ともいう。インドの雨期はだいたい4か月ほどであるが、そのうち3か月間(4月16日~7月15日、または5月16日~8月15日)は、修行者は旅行(遊行(ゆぎょう))をやめて精舎(しょうじゃ)や洞窟(どうくつ)にこもって修行に専念したのである。この期間は雨が激しくて徒歩旅行に適さず、また草木虫類を傷つけるので、釈迦(しゃか)は雨期の止住を規定した。これが安居の始まりである。出家修行者の教団内の新旧や先後の序列は、年齢(世寿(せじゅ))にはよらず、この安居の回数(法臘(ほうろう)、つまり入団後の年数)によって決められた。
中国では、所によっては降雪のため真冬の旅行も不適であったので、冬季にも安居する慣習が生まれた。これは雪(せつ)安居、冬(とう)安居とよばれ、10月16日~翌年1月15日の3か月間(場合によっては2月15日までの4か月間)がその期間である。
わが国では684年(天武天皇13)に初めて安居が行われたと伝えられる。江戸時代には各宗の本山で盛んに実施された。今日でも禅宗の僧堂などでは、年2回の安居が厳格に行われている。禅宗では、安居に入ることを「入制(にゅっせい)」「結夏(けつげ)」「結制(けっせい)」、安居期間を「制中(せいちゅう)」、その終了を「解制(かいせい)」「解夏(かいげ)」、安居期間以外の時期を「解間(げあい)」「制間(せいかん)」と、それぞれよんでいる。俳句では、安居は夏の季語である。
[森 祖道]
インドの僧伽で雨季の間,行脚托鉢をやめて寺院(阿蘭若(あらんにや))の中で座禅修学するのを,安居または雨安居(うあんご),夏安居(げあんご)といった。これは仏教が伝播した国々でも,雨季の有無にかかわらずおこなわれ,多くは4月15日から7月15日までの90日であった。これを一夏九旬といって,各教団や大寺院でいろいろの安居行事がある。安居の開始は結夏(けつげ)といい,終了は解夏(げげ)というが,解夏の日は多くの供養があるので,僧侶は満腹するまで食べる。これが僧自恣(じし)の日で,盂蘭盆会(うらぼんえ)は7月15日に自恣の僧に百味飲食(ひやくみのおんじき)を供する日である。日本では683年(天武12)夏に宮中で僧を安居せしめたのが最初である。安居も4月よりはじめるのを前安居といい,5月よりはじめるのを後安居という。山岳寺院では安居に合わせて夏峰入修行がおこなわれ,これを花供(はなく)入峰といい,7月15日に出峰して蓮花会延年をおこなうのも,解夏の僧自恣にあたる。
執筆者:五来 重
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仏道修行者が一定期間1カ所に集まって修行すること,またその期間。インドの夏は雨期があるため外出が不便で,その時期に一定の場所で修行に専念するようになったとされる。日本では,683年(天武12)宮中で行ったのが文献上の初見。陰暦4月15日から3カ月間行われるのがふつうで,平安時代以後,一般寺院でも盛んに行われ,中世には禅宗で冬期も行われるようになった。
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