甲府市北端にある標高二五九九メートルを測る
南佐久郡の南端、
関東山地の西部、秩父山塊の最高峰
熊本市北西部、
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
奈良県中部,吉野の金峰山は修験道発祥の山として知られ,全国に分布する金峰山やそこにまつられる蔵王権現は,この吉野金峰山を模倣し勧請したものである。金峰山の境域は明確ではなく,およそ吉野山から大峰山にかけての山々を指すが,本来は青根ヶ峰(858m)を主峰とし,その信仰も神奈備(かんなび)信仰に発したと思われる。しかし忿怒相で火焰を背負う金剛蔵王権現が主神となるに及んで,山上蔵王堂が存在する山上ヶ岳が金峰山の主峰になったのである。吉野金峰山は奈良時代末より平安時代中期にかけて多くの修行者が入山し,吉野の愛染,岩倉を中心に多数の堂塔が造立され修験の一大勢力を形成した。また古くから〈金の御嶽(かねのみたけ)〉と呼ばれ,黄金を蔵する山とする観念があり,さらには弥勒浄土の兜率天(とそつてん)内院に擬されて宇多法皇,白河上皇の御幸をはじめ,藤原道兼,道長,師通なども参ったほど御嶽詣が流行した。なかでも1007年(寛弘4)の道長の御嶽詣,納経は世に広く知られている。
蔵王権現はすでに9世紀に出現しているが,後に修験道の開祖役行者(えんのぎようじや)(役小角(えんのおづぬ))の蔵王権現感得譚が流布したこと,山上ヶ岳より出土した多数の遺物のうち神仏像の大半が蔵王権現であること,江戸時代の制作が多いものの,蔵王権現を中央に配し,天満天神,佐抛明神,子守明神,勝手明神,役小角,八王子などを描いた吉野曼荼羅が存在することなどからも蔵王権現に対する信仰の強さがうかがわれる。また吉野山は空海や聖宝との関係から修験道当山派の拠点とされてきた。
執筆者:宮本 袈裟雄
秩父山地のほぼ中央に位置する山で,主稜線は山梨・長野県境に一致する。山梨県側では〈きんぷさん〉,長野県側では〈きんぽうさん〉と呼ばれていたが,現在は前者に統一されている。幾日峰(いくひのみね)とも呼ばれるが,あまり一般的ではない。標高2599mは奥千丈岳に次いで山地第2の山であるが,ゆったりとした秀麗な山容は秩父山地で最も人をひきつける。山体は中生代の小仏(こぼとけ)層を貫く花コウ岩から成る。北斜面は千曲川の,南東斜面は荒川から富士川への源流域である。一般に秩父山地稜線部の植生は大部分が亜高山帯の極相林(コメツガ,シラビソ,オオシラビソ)であるが,金峰山では山頂部にハイマツ,キバナシャクナゲ,低木化したダケカンバを主とする高山帯が出現する。秩父多摩国立公園に属し,頂上付近にある高さ18mの五丈岩は金峰山の目印となっている。古くから修験道の盛んな山で,五丈岩の下には,かつて籠堂が置かれていた。登山基地の一つ西麓の増富温泉はラジウム泉として知られる。
執筆者:平川 一臣
熊本県中部,熊本市の西部にそびえる火山。標高665m。金峰火山群の主峰で,〈きんぼうざん〉ともいう。東の阿蘇山に対し,西山とも呼ばれ,熊本市民に親しまれている。その成因については,金峰山を中央火口丘とするほぼ正方形のカルデラ型火山とも,いくつかの異なった火山の集まりが,その後の断層運動でカルデラらしい地形になったともいわれている。地質はおもに第四紀に噴出した新期角セン石安山岩からなっている。一帯は金峰山県立自然公園,くまもと自然休養村に属し,名勝旧跡に富む。山の西肩に夏目漱石《草枕》ゆかりの峠の茶屋跡,北西麓に小天(おあま)温泉,西腹に宮本武蔵が《五輪書》を執筆した霊巌洞があり,洞内には岩戸観音がある。テレビ塔が立つ山頂には南北朝時代菊池武重が勧請した大和国金峰山(きんぷせん)の蔵王権現がまつられ,これが山名の由来となっている。頂上からの展望は開け,西方島原湾に臨む山麓一帯にはミカン園が展開する。
執筆者:岩本 政教
山形県鶴岡市の北西部,摩耶山地の北端に位置する花コウ岩質の山。標高471m。山頂には吉野の金峰山(きんぷせん)から蔵王権現の分霊をまつったといわれる金峰神社がある。庄内藩主酒井氏も祈願所として崇敬するとともに,近世までは女人禁制の山で金峰蔵王権現の修験道の霊山として栄え,出羽三山の行者の参詣も多かった。また庄内漁民の出漁中の位置を知る目印ともなった。山頂からは庄内平野,日本海とともに鳥海山,月山の眺望がひらけ,新緑・紅葉シーズンにはハイカーでにぎわう。登山路は青竜寺(しようりゆうじ),新山や湯田川温泉から整備されており,杉の老木間を抜ける参道には供養碑など民衆の信仰の面影を多く残している。ブッポウソウの生息地。国の名勝で,庄内海浜県立自然公園に含まれている。
執筆者:中川 重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
熊本県中部、菊池平野(きくちへいや)と熊本低地との間に位置する二重式火山。標高665メートル。更新世(洪積世)前期火山岩からなる外輪山は、陥没カルデラの中心から放射状および同心円状の形をとる断層によって、多数の丘塊に分断されている。更新世末期火山岩からなる一ノ岳(665メートル)は主峰で、中央火口丘であるが、同じ岩質からなる二ノ岳(熊岳)、三ノ岳(那智(なち)山)は外輪山の山腹に噴出した寄生火山である。山頂の金峯山神社(きんぽうざんじんじゃ)は、南北朝時代に菊池氏が再興して以来、西麓(せいろく)の岩戸観音、東麓の本妙寺(ほんみょうじ)とともに参詣(さんけい)の対象になっている。また、山頂からの眺望もよく、夏目漱石(そうせき)の『草枕(くさまくら)』ゆかりの峠の茶屋、西南戦争で知られた吉次越(きちじごえ)ほか旧跡にも恵まれ、登山、ハイキング、自然観察の好適地であることから、山体のほとんど全域が県立公園に指定されている。南麓には熊本市立の「金峰山少年自然の家」があり、レクリエーションセンターの機能を果たしている。島原湾に臨む西麓は、温暖な気候特性を活用した温州ミカン(うんしゅうみかん)の一大産地。
[山口守人]
「きんぷさん」ともいう。古来、奈良県吉野川左岸の吉野山から山上(さんじょう)ヶ岳に至る一連の諸峰を金峰山または金御岳(かねのみたけ)といい、山上ヶ岳の南、天川(てんかわ)村小篠(おざさ)から熊野までの峰々を大峰山(おおみねさん)と称していた。また平安時代以後、熊野信仰と結び付いた修験道(しゅげんどう)が隆盛となり、山上ヶ岳および吉野山の蔵王(ざおう)堂を中心に立ち並ぶ修験寺院を一括して金峯山寺(きんぷせんじ)、地主神を祀(まつ)る神社を金峯神社(きんぶじんじゃ)と称した。後世、金峰山と大峰山は混同され、山上ヶ岳を大峰山とよぶようになった。
[菊地一郎]
山形県西部、摩耶山地(まや)北端に位置する山。標高471メートル。「きんぼうさん」ともいう。花崗(かこう)岩質で、山頂には奈良県吉野の金峰山(きんぶせん)から勧請(かんじょう)した金峯蔵王権現(きんぼうざおうごんげん)を祀(まつ)る金峯神社がある。明治初期の神仏分離まで修験道(しゅげんどう)の霊山として栄え、出羽(でわ)三山行者の参詣(さんけい)も多かった。境内には、銅鉢(国指定重要文化財)などを展示した金峯山博物館がある。山頂からの眺望もよく、新緑、紅葉時には老杉の間の登山道はハイカーでにぎわう。国の名勝に指定されており、山麓(さんろく)に湯田川温泉、県の金峰少年自然の家がある。庄内(しょうない)海浜県立自然公園に含まれる。JR羽越本線鶴岡(つるおか)駅からバス便がある。
[中川 重]
山梨県甲府市と長野県南佐久郡川上村の境に位置する、秩父山地(ちちぶさんち)西部の名山。標高2599メートル。山頂に五丈岩とよばれる岩峰があり、その基部に御岳(みたけ)の金桜(かなざくら)神社の蔵王権現(ざおうごんげん)を祀(まつ)った祠(ほこら)がある。かつては修験道(しゅげんどう)者が吉野の金峰山(きんぶせん)に擬した霊場の山であった。秩父の山では珍しい山容、ハイマツ、高山植物などにひかれ登山者は多い。また、近辺ではかつて良質の水晶を産した。登山には、韮崎(にらさき)からバスで増富(ますとみ)温泉まで入り、富士見平から大日岩に出て、稜線(りょうせん)を行くのが一般的である。
[吉村 稔]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…標高929m。金峰山(きんぷせん),武州御岳(嶽)ともいう。江戸西方の蔵王信仰の山として知られる。…
…吉野の桜は歌に詠まれ,自然観照の変化とともに桜はしだいに有名となってゆく。一方,山上ヶ岳の南方小篠から北西吉野川にいたる一連の峰を金峰山(きんぷせん),小篠から南熊野までを大峰山(おおみねさん)(現在は山上ヶ岳をいう)といって,奈良時代以来修験の霊場となった。金峰山には金剛蔵王権現がまつられ,平安時代中期には寺院の形態を整えて蔵王堂以下多くの坊舎が建ち,金峯山寺と総称,院政期にかけて貴紳の御嶽詣が盛行した。…
※「金峰山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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