日本大百科全書(ニッポニカ) 「三貨図彙」の意味・わかりやすい解説
三貨図彙
さんかずい
江戸後期の貨幣研究書。草間直方(くさまなおかた)著。42巻(44冊)。1815年(文化12)脱稿。書名の由来は、凡例に「金銀銭古今通行沿革ノ跡ヲアツメ、カネテ其図(そのず)ヲシルスニ依(より)テ也(なり)」と記されている。本書は初めの20巻に、金銀銭三貨の鋳造、通用の沿革を記し、かつその正確な貨幣図を掲げ、形状、量目(りょうめ)、色合いを示し、次の「物価之部」10巻には、物価論、貨幣論を述べるとともに、1575年(天正3)以降の物価の推移を米価を中心に詳述し、次の「附録之部」9巻には、権量(けんりょう)(はかり、ます)、宝鈔(ほうしょう)(紙幣)、為替(かわせ)、徳政について記し、また貨幣史関係の古文書、編著(青木昆陽(こんよう)『銭幣略記』、小瀬甫庵(おぜほあん)『八物語配金ノ事』、新井白石(あらいはくせき)『本朝宝貨事略』、佐久間東川(さくまとうせん)『天寿随筆』、松平定信(さだのぶ)『庶有編』)を収め、最後の「遺考」3巻には、1816年(文化13)以降25年(文政8)までの物価の変動を記している。江戸時代における傑出した貨幣研究書で、維新後大蔵省の刊行した『大日本貨幣史』はこの書を参考にして編纂(へんさん)されている。
[滝沢武雄]