上北山(読み)かみきたやま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「上北山」の意味・わかりやすい解説

上北山(村)
かみきたやま

奈良県南東部吉野郡にある林業村。東の大台ヶ原山地と西の大峰山脈の間を南流する北山川上流域を占め、村域の南東部は吉野熊野国立公園域である。「北山」は熊野地方北方の山里をさす地方名といわれる。集落は国道169号(東熊野街道)沿いの北山川谷底に散在し、中央部の河合が中心集落である。169号から国道309号が分かれ、村域の南部を国道425号が通じる。主産業は素材生産で、特産品に栃餅(とちもち)、コンニャクがあり、アマゴ養殖も行われている。大台ヶ原山はドライブウェー開通によって観光地として開かれ、和佐又(わさまた)山はスキー場や夏の林間学校に利用される。河合には上北山温泉、また東部に坂本ダムがある。仏経(ぶっきょう)岳原始林、水分(みくまり)神社のシシンラン群落は国指定天然記念物。面積274.22平方キロメートル、人口444(2020)。

[菊地一郎]

『奈良県教育委員会文化財保存課編『上北山文化叢書』4冊(1964・上北山村)』


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改訂新版 世界大百科事典 「上北山」の意味・わかりやすい解説

上北山[村] (かみきたやま)

奈良県南東部,吉野郡の村。人口683(2010)。東は大台ヶ原山などの台高山脈によって三重県と接し,西部には弥山(みせん)などの大峰山脈が走り,中央部を北山川が南流する。村域の97%が山林で,急峻な地形をなす。大台ヶ原山は年間降水量が4700mmをこえる日本屈指の多雨地帯である。熊野川電源開発計画により,1962年に坂本ダム,64年には池原ダムが完成し,東ノ川,白川の両集落約200戸が水没,その6割が村外に移住した。同時に国道169号線(東熊野街道)の整備が進み,66年に新伯母峰トンネルが開通,吉野,橿原(かしはら)方面へ通じるようになった。杉,ヒノキの人工林がよく育ち,林業が村の基幹産業である。杉などの素材はおもに宇陀方面へ,雑木やパルプ,チップなどは新宮方面へ移出される。
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世界大百科事典(旧版)内の上北山の言及

【熊野杉】より

…和歌山県熊野川河口の新宮を輸送基地とする杉材の称であるが,主産地は上流の北山郷(現,奈良県吉野郡上北山村,下北山村)である。杉,ヒノキ天然林の蓄積豊かな北山地方の林業開発は,同地方が江戸幕府領となった近世初期に始まるが,その当時から幕府は北山郷14ヵ村に〈木年貢〉制を敷き,本年貢代りに収納する杉,ヒノキ材(長さ3間半の1尺2寸角木)のほか,材木前渡金に当たる〈拝借銀〉を融資し,併せて年800本を超える良材を上納させた。…

※「上北山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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