家庭医学館 「上咽頭線維腫」の解説
じょういんとうびいんくうせんいしゅ【上咽頭(鼻咽腔)線維腫 Nasopharyngeal Angiofibroma】
上咽頭にもっともよく発生する良性腫瘍(りょうせいしゅよう)で、発生頻度は頭頸部腫瘍(とうけいぶしゅよう)全体の0.05%程度です。かつては10歳代の若い人に多いことから、若年性上咽頭線維腫(じゃくねんせいじょういんとうせんいしゅ)と呼ばれましたが、最近は、たんに上咽頭線維腫と呼ばれることが多いようです。良性腫瘍ですが、周囲の組織を圧迫・進展していく悪性腫瘍と同様の経過をとります。
[症状]
長期にわたる鼻づまり、くり返しおこる大量の鼻出血(びしゅっけつ)、鼻声などが特徴です。
腫瘍の発育はゆっくりですが、大きくなると周囲の器官を圧迫し、これによる障害が出てきます。鼻腔(びくう)と中耳腔(ちゅうじくう)をつなぐ開口部を圧迫すると、耳がつまった感じ(耳閉感(じへいかん))や難聴(なんちょう)をおこします。さらに大きくなると眼球突出(がんきゅうとっしゅつ)や頸部の腫脹(しゅちょう)がみられたり、また頭蓋内(ずがいない)に進展すると、頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)症状 (「頭蓋内圧亢進/脳ヘルニア」)がみられるようになります。
[治療]
この病気の診断には内視鏡、CT、MRIなどが有効です。治療は、手術で腫瘍を摘出します。
この腫瘍は、血管が豊富で非常に出血が多いため、最近は、血管造影により腫瘍に血液を送っている血管をつめ、腫瘍への血流を少なくしてから手術することも行なわれています。