循環系における血液の移動をいう。血流は,動脈,毛細血管,静脈など血管の種類によって特徴的な様式を示す。その第1は,心室の収縮期のみに血液は大動脈へ拍出され,拡張期には拍出されないため大動脈および分配動脈内は著しい拍動流(1心拍内に流量と流速が周期的に変わる)となるが,細動脈,毛細血管,細静脈へと移行するにしたがい定常流(流量と流速が一定)に近づくことである。このような変化は血管が剛体ではなく伸展性を有しているためで,とくに大動脈壁の弾性と細動脈の血流抵抗によって起こる。
第2は,血管口径や横断面積の差によって血液の流量と流速の関係が異なることである。大動脈の口径は動物の種類によって,また同じ動物でも個体間で著しい差があるが,毛細血管の口径は約6μmと種類や個体差の影響は少なく,ほぼ一定である。平均流量は平均流速と横断面積の積であり,人間の大動脈の平均流量が小動物に比較して多いのは横断面積が大きいためであるが,平均流速はほぼ一定している。横断面積のだいたい等しい毛細血管では,動物間および個体間で流量および流速はほぼ一定している。ただし,同一個体でも運動などにより大量の酸素や栄養素の補給が必要となったさいは,大動脈では横断面積よりも流速の増大によって血流量は増加する。これに対し,細動脈では面積の拡張,毛細血管では流れる毛細血管の数の増加と流速の増加によっている。
第3は,血液は血漿と血球成分が混和した流体であるが,その比率や状態が血管によって異なることである。血球成分の大多数を占める赤血球の直径はほぼ8μm前後である。この赤血球は大動脈,分配動脈,静脈等の口径に比較すると小さいため,これらの血管では血液の流れを均質な液体の流れと仮定できるが,血管口径が小さくなるにつれて,血漿と血球成分の比率が変化したり,また血球成分のみが流れの中心に集まってくる(これを軸集中という)。さらに,口径6μmの毛細血管を赤血球が流れる場合は血漿と血球は交互にサンドイッチ状となり,かつ赤血球は帽子のように変形して流れるようになる。なお,大・中血管での流れについては〈ハーゲン=ポアズイユの法則〉の項目を参照されたい。
執筆者:二宮 石雄
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血管内における血液の流れをいう。動脈では、心臓の収縮期に、血液に対して高い圧力が加わり血流がおこるが、拡張期には大動脈弁が閉じているので、圧力は低下する。しかし、拡張期中においても血流が末梢(まっしょう)へ向かって進むのは、動脈壁の弾力によって押されるからである。したがって、動脈では血圧や血流は拍動しているが、毛細血管になると拍動はほとんどなくなり、連続した流れとなる。静脈も同様に連続した流れである。血流の速さは、大動脈で毎秒約50センチメートル、毛細血管で毎秒約0.5ミリメートル、大静脈で毎秒約25センチメートル程度である。毛細血管の血流が遅いのは、分枝が多く、総断面積が著しく大きいからである。心拍出量は安静時に毎分約5リットルで、全身を循環するのに要する時間は50~60秒である。
[真島英信]
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