内科学 第10版 「上室期外収縮」の解説
上室期外収縮(上室頻脈性不整脈)
概念
洞結節から房室結節接合部までのいずれかから発生する興奮をいう.3発以上連続するものは頻拍として扱う.
分類
発生部位により洞結節,心房および房室結節接合部に分けられる.心室への伝導の有無から,伝導性と非伝導性に分けられる.また休止期からみて代償性と非代償性に分類される.
原因・成因
運動,コーヒー,喫煙,飲酒が誘因になる場合がある.心筋炎,虚血,心臓切開術も原因になる.心不全では期外収縮が多くなる.心房筋の変性や線維化などが原因となり,機序に自動能の亢進やリエントリーなどが考えられる.肺静脈や上大静脈の外側を走行する心房筋に異常興奮が発生し,心房期外収縮をきたしたり心房細動のトリガーとなることがある.
疫学
頻度は加齢とともに増加し,70歳以上では高率に認める.
病態生理
洞性期外収縮は洞調律時と同じP波を,心房期外収縮は異なる心房波形(P')を示す(図5-6-6).心房期外収縮が洞結節に進入し洞調律をリセットすると,心房期外収縮を挟むPP間隔は本来のPP周期の2倍より短くなる(非代償性休止期を伴うという,図5-6-6A).洞結節をリセットしないものは,心房期外収縮を挟むPP間隔は本来のPP間隔の2倍になる(代償性休止期を伴う,図5-6-6B).洞調律と心房期外収縮が交互に1:1,2:1,3:1のように出現することがあるが,これらは2段脈,3段脈,4段脈のようによぶ(図5-6-6C,2段脈).
連結期の短い早期の心房期外収縮の房室伝導は,ブロックをきたし心室へ伝導されなかったり(非伝導性心房期外収縮),伝導されてもPQ間隔の延長や変行伝導により脚ブロックを伴うことがある(図5-6-6C).
臨床症状
ほとんど無症状であるが,瞬時の胸部不快感をきたすことがある.
診断・鑑別診断
心電図による.起源はP波から判定する.正常でもPP間隔は呼吸によりわずかな変動を示すので,これと鑑別を要する.補充収縮は洞調律の遅延または欠落によるためで,PP'間隔(=連結期)は基本洞周期よりも長くなることから鑑別できる.変行伝導を伴う心房期外収縮は,心室期外収縮やデルタ波を伴うQRSとの鑑別を要する(図5-6-6C).非伝導性の心房期外収縮が先行するT波に重なり不明なことがあり,2段脈では洞房ブロックや洞徐脈と鑑別を要する(図5-6-6C).心房期外収縮の診断は簡単であるが,基礎疾患の有無や心機能についての検索が望まれる.
経過・予後
予後は良好である.
治療
原則として治療は要さない.ときに強い自覚症状を訴える例がある.このような場合,精神安定薬もしくは抗不安薬やβ遮断薬から試みる.原疾患があればその治療を優先する.[相澤義房]
■文献
Cappato R, Calkins H, et al: Updated worldwide survey on the methods, efficacy, and safety of catheter ablation for human atrial fibrillation. Circ Arrhythm Electrophysiol, 3: 32-38, 2010.
Connolly SJ, Ezekowitz MD, et al: Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med, 361: 1139-1151, 2009.
児玉逸雄,他:不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版),日本循環器学会,http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_h.pdf
奥村 謙,他:不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版),日本循環器学会,http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_okumura_h.pdf
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報