上所(読み)アゲドコロ

デジタル大辞泉 「上所」の意味・読み・例文・類語

あげ‐どころ【上(げ)所】

手紙などの宛名を書く所。また、宛名の上部に書く「謹上」「進上」などの語。

じょう‐しょ〔ジヤウ‐〕【上所】

手紙などのあて名の上部に「進上」「謹上」などと書くこと。あげどころ。

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精選版 日本国語大辞典 「上所」の意味・読み・例文・類語

じょう‐しょ ジャウ‥【上所】

〘名〙
① 手紙などのあて名の上部に、差し出す相手に応じて「進上」「謹々上」「謹上」などと書くこと。あげどころ。
※貴嶺問答(1185‐90頃)「上所事。進上字。中古職事奉大臣状如此書云々。〈略〉上所思煩之時。或不之一事云々」
② あて名を書くところ。また、そのあて名。あげどころ。あてどころ。

あげ‐どころ【上所】

〘名〙
① 手紙などの、相手の名あてを書く場所。また、その名あて。宛所(あてどころ)。じょうしょ
※小大君集(1005頃)「ゐなかへやる文のあげどころに」
② 手紙などの名あての上部に書く「謹上」「進上」などの語。じょうしょ。

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改訂新版 世界大百科事典 「上所」の意味・わかりやすい解説

上所 (あげどころ)

〈じょうしょ〉ともいう。書札(手紙)または書札様文書において,宛名の上に,相手を尊敬して書く語句のこと。すでに奈良時代から,謹上,謹状,謹進上,謹奉,謹通,敬上,奉,上,通などが用いられているが,謹上がもっとも多い。平安時代になると,目上の人に対しては進上,同輩に対しては謹上というように,用いる文字がある程度定まってきた。これをさらに詳しく定めたのが,鎌倉時代にできた《弘安礼節》である。すなわち差出人と受取人との身分の差に応じて,進上と書くべきもの,謹々上ないし謹上と書くべきもの,上所の必要のないものを,その書止め文言とともに示している。進上がもっとも厚く,順次,礼が薄くなるのである。戦国時代には,謹上を,目上には楷書,同輩へは行書目下には草書で書いたこと,しかし天正の末年(1580年代)より上所を書かなくなったことが,《大館常興書札抄》に見えている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「上所」の意味・わかりやすい解説

上所
あげどころ

充所(あてどころ)の上につけて、相手に対する尊敬を表す。「じょうしょ」とも読む。「進上」「謹上」などが用いられる。

[編集部]

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世界大百科事典(旧版)内の上所の言及

【上所】より

…これをさらに詳しく定めたのが,鎌倉時代にできた《弘安礼節》である。すなわち差出人と受取人との身分の差に応じて,進上と書くべきもの,謹々上ないし謹上と書くべきもの,上所の必要のないものを,その書止め文言とともに示している。進上がもっとも厚く,順次,礼が薄くなるのである。…

【宛書】より

…これに対し一般書状や書状形式の綸旨(りんじ),院宣,御教書(みぎようしよ)の類では,宛書は最末行に書かれる。宛書は個人あてのときは,直接その氏名を書かず,その人の官職や位階などで表現する場合もあり,差出人と受取人の身分の差に応じて,宛名の上に上所(あげどころ)といって進上,謹上などの文字を,また宛名の下に殿,様,館などの敬称を,宛名の脇に参(まいる),人々御中,侍史,机下などの脇付(わきづけ)を書くこともある。この上所から脇付までを総称したものが宛書である。…

【手紙】より

…近世の武家では,通例,将軍,主君の安穏を慶賀する祝辞で始まることが多い。宛名には〈上所(あげどころ)〉といい,謹上,進上などの表敬の文字を上部に記し,下には殿,様,先生,兄などの〈敬語〉を楷,行,草にわたって書き分け,さらにその左右の下に〈脇付け〉として人々御中,侍者,侍史,参,まいる,机下などと記し,相手を直接指示しないで敬意を表する。また文中高貴の人物については行を変えたり(平出),その上を1,2字間空白(闕字(けつじ))とする。…

※「上所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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